「働き方改革」なる言葉を耳にするようになってから、既に5年ほどが経過しました。皆さんの職場や周囲でも働き方改革に向けた取り組みが着々と進められていることでしょう。特に新型コロナウイルス拡大にともない、その勢いは加速していると言っても過言ではありません。
そもそも「働き方改革」は、「一億総活躍社会(「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、 障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会」)」の実現に向けた柱として、2016年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込まれたものが起源となります。その後、同年9月26日に内閣総理大臣決済にて「働き方改革実現会議(安倍内閣総理大臣の私的諮問機関)」が設置され、働き方改革に向けた本格的な取り組みがスタートします。
本記事では、そんな働き方改革によって企業はどのようなデメリットがあるのか?メリットと合わせて解説していきます。
働き方改革=日本の労働生産性を飛躍させる
2019年12月18日に発表された「労働生産性の国際比較 2019」によれば、労働生産性において日本は主要先進7カ国中で最下位、OECD加盟36カ国中では21位と前年から変わらない残念な状態です。単刀直入に言ってしまうと「日本の労働生産性は先進国の中で低水準である」ということです。
労働生産性というのは企業が生み出した付加価値に対して、どれくらいの労働力が投じられているかによって変化します。2015年より労働生産性ランキング1位に君臨しているアイルランドでは、極めて低い法人税率でGoogleやAppleといった大企業を国外から誘致し、その売上高がアイルランドで計上されていることが関係していると言われています。従って労働生産性とは単純な数値で表されるものではありませんが、日本においてはこの結果を真摯に受け止めて改善へ取り組むべき時ということなのでしょう。
働き方改革とはつまり、そうした現状問題を踏まえて誰もが活躍できる社会を作り上げることで日本の労働生産性を飛躍させ、高い国際競争力を生み出すための施策だとも言えます。
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働き方改革によるデメリット
働き方改革と言えば、働き方改革実現会議が取りまとめた基本計画を具体的な法案として落とし込んだ「働き方改革関連法案」が2019年4月より施行されたことで大きな反響がありました。とりわけ「時間外労働の上限規制」に対する注目が大きかったことが多くの企業を変えようとしました。
この「時間外労働の上限規制」は、中小企業では2020年4月より施行され、その内容は「所定の残業規制(月間45時間)を超えて労働できるのは繁忙期であっても年間で6ヵ月までとされ、年間の上限規制が720時間、さらに月間100時間未満、複数月間平均80時間未満」と、それまで規制がほぼない状態であった時間外労働に厳格な規制を設けた内容になっています。罰則もあることから、これまで時間外労働に別段規制を設けていなかった企業では急ピッチで業務改善を実施する必要性が生じました。
では、これらの内容も踏まえて働き方改革によるデメリットを労働者と企業の視点からご紹介します。
労働者のデメリット
「時間外労働の上限規制」が施行されたことで、これまで以上に限られた時間の中で業務を遂行させる必要性があることから、業務の効率化や労働生産性の向上へ努めなければいけないという負担が増しています。しかし、企業の仕組みが変わらないため労働者にその負担のほとんどがのしかかっているケースが少なくありません。
より厳格なスケジュール管理、無駄な作業の省略、昼休み返上での作業、仕事を自宅へ持ち帰る。本来は労働者のワークライフバランスを整えるはずの働き方改革が、今まで以上にバランスを乱してしまっているわけです。
また、時間外労働による割増賃金をあてに生活している労働者もいるわけですから、給与が減少することによる生活水準の低下も考えられます。
テレワーク、リモートワーク環境においてはどうでしょうか?働き方改革の一環として、コロナ渦における新たな働き方として注目されているワークスタイルですが、従来対面で行っていたコミュニケーションが一変するため情報伝達が遅れたり、コミュニケーションミスが頻発したりと、仕事の正確性やコラボレーションにおける部分がデメリットになりつつあります。
企業のデメリット
企業側のデメリットはやはり、労働者を使用できる時間がこれまでより少なくなることで、今までのやり方ではアウトプットが限られ、収益性が低下する恐れがあることです。特に受託企業ではどれだけ多くのアウトプットを出せるかで利益が算出されますので、労働時間が短くなるほど利益が減少する可能性があります。ただし裏を返せば、これまでのビジネスが企業のキャパシティをオーバーしていたため、これを機に健康的な企業経営を目指すと考えることもできるでしょう。
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働き方改革のメリットとは
では、デメリットと反対に働き方改革にはどのようなメリットが生じるのでしょうか?
まず期待できるのは労働生産性向上による収益増加です。ある心理学的研究では、「締め切りを設定したグループ」と「締め切りを設定しないグループ」でレポートの質について調査したところ、「締め切りを設定したグループ」の方がレポートの質が際立って高かったという結果が出ています。
人間は締め切りが決まっているとそれに向けて最善を尽くす傾向がり、かつそうした際に発揮する力は非常に効率的かつ高い集中力があることから、高いパフォーマンスが発揮できると考えられています。ビジネスにおいても、働き方改革によって労働時間が減少することでタスクごとの「締め切り」がより厳格化され、それが労働生産性の向上と収益の増加を招くと考えられます。
また、働き方改革の代表的施策であるリモートワークを実施することで、ワークスタイルに先進的な企業といった印象により求職者が増加する可能性があるでしょう。さらに働く場所を選ばないことによって、優秀な人材を確保することにも貢献できます。特に地方中小企業はリモートワークを本格的に推進することで商圏範囲が広がりますし、全国津々浦々から優秀な人材を招くことができます。
このように働き方改革は企業の負担になるものばかりではなく、メリットをもたらしてくれる側面も併せ持っています。大切なのはデメリットを最小化し、メリットを最大化するためには何に取り組めば良いか?を考えることです。
テレワーク環境における仕事管理の重要性
前述した通り、コロナ渦において多くの企業が在宅勤務やテレワークへと移行しています。そのような中で、仕事が見えない、コミュニケーションが不足しミスが頻発する、進捗確認などに多くの時間を費やす、誰が何をやっているのかわからないと言った悩みが多いことも事実です。このような悩みがある企業は仕事管理ソフトウェアである「Asana」を採用することをお勧めします。Asanaは組織のワークプレイスの在り方を見直すために、リモートワーク に適した仕事管理ソフトウェアです。Asana を使用すれば、従業員はより効率的にコラボレーションし、仕事量を管理し、より速く決断を下すことができます。そうすることで、全員にとって仕事の働きがいが高まり、生産性が上がり、会社への貢献度やワークライフバランスを最適化できます。
働き方改革にはデメリットがあればメリットもあります。働き方改革関連法案によってこの流れを拒否することはできないため、企業はまずどのメリットに着目し、何を最大化したいかを考えてから働き方改革へ取り組むかが重要になります。この機会に、働き方改革に対する認識を変えてみてはいかがでしょうか?
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