「インクルージョン」は福祉の分野で用いられていた言葉ですが、2010年頃からビジネスシーンでも注目されるようになりました。現在、さまざま立場の人が協力してアイデアを生み出す「共創」の必要性が高まっています。
本記事では、経営における共創とインクルージョンの意味とメリットを解説します。自社の経営戦略に取り入れてみてはいかがでしょうか。
経営における共創とは
経営における共創とは、さまざま立場にあるステークホルダーと対話し、意見を取り入れることで、共に新しい価値の商品やサービスを生み出していく考え方を指します。
ステークホルダーと対話を重ねるのが重要なポイントで、消費者や協力企業、投資家などそれぞれ利害を有する方々を巻き込んでいきます。そして、出された意見の中から潜在化したニーズや、社内人材だけでは思いつかないようなアイデアなどを積極的に取り入れ、イノベーション実現を目指していきます。
経営における共創は、「コ・クリエーション」や「共創マーケティング」とも呼ばれ、近年なじみのある言葉となりつつあります。
これからは顧客との共創が求められる
従来、ビジネスの現場では、業界という枠組みの中で同業他社と売り上げを競いシェアを争っていました。業界内でのポジションが確立されると大きな変化は起こりにくくなり、競争優位性を継続しやすいシステムでした。
しかし、近年は「VUCA(Volatility:変動性/Uncertainty:不確実性/Complexity:複雑性/Ambiguity:曖昧性)」の時代とも呼ばれ、目まぐるしい変化に対応し続ける必要があります。業界という枠組みから抜け出せない企業は、予想外の競争相手が出現した際、確立してきた競争優位性を発揮できず、ビジネスの場から淘汰されてしまうのです。
こういった経緯もあり、顧客やステークホルダーとの共創によって、新たな戦略や商品・サービスの差別化を図る企業が増えています。共創と一言でいっても、一方的に顧客のニーズをリサーチして実践するのではなく、研究・開発の段階から顧客との対話を取り入れる姿勢が要求されます。
経営におけるインクルージョンとは
「インクルージョン」とは、「包含」「包括」という意味があり、簡単に言うと「さまざまなものを中に含めつつ一体感のある」状態を表しています。社会におけるインクルージョンとは、性別、国籍、性的指向、障害や介護の有無など、さまざまな属性を包括して捉えて生かすことを指します。従来は、社会的格差への問題解決を図るべく福祉や教育分野で取り入れられていた概念でした。
前述したとおり、ビジネスの場で従来の枠組みが通用しなくなりつつある今、インクルージョンを経営に当てはめる動きが活発化しています。経営におけるインクルージョンとは、企業内すべての従業員が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方が認められ活かされている状態を指すものです。似た用語に「ダイバーシティ」がありますが、ダイバーシティは多様な属性が集まっている状態で、インクルージョンはその多様性が合わさって全体として効果を発揮している状態を指しています。
両者は密接な関係にあるため、頭文字をとって「D&I」とひとまとめにし、同時に取り組む企業も少なくありません。
これからはインクルージョンへの発展が求められる
2000年以降の労働人口減少に伴い、従来は労働力の中心として捉えてこなかった女性やシニア層、外国人、障害を抱える方などさまざまな属性を持つ人を雇用しようとする企業が増えてきました。多様性のある人材を雇用するという意味で、「ダイバーシティ」という言葉が用いられるようになりました。
ただし当時は、多様な人材を雇用したとしても、個々の能力を十分発揮して働いてもらうための環境が整備されていませんでした。日本では、均質的なシステムや組織体制が重視されており、それに慣れている従業員にとって多様性を受け入れるのは容易ではなかったのです。
そこで、多様な人材を受け入れるだけではなく、多様性を存分に生かすインクルージョンへの発展が求められるようになりました。そのためには、働き方や価値観における多様性を認めて活かすシステムや人事制度を構築しなければなりません。
共創によるメリット
経営における共創について前述しましたが、共創によってどのようなメリットがあるのでしょうか。2つのポイントに絞り解説します。
消費者のニーズを活かした新たな価値提供ができる
一般的に商品・サービスを開発する際は、自社のリサーチ担当者や調査会社が提供するデータをもとに、消費者のニーズを分析します。しかし、この方法では調査する内容や方法などが企業側の既存の考えにとらわれがちで、消費者が実際に求めているものとズレが生じることがあります。
一方で共創ビジネスでは、開発段階から消費者の生の声を土台に商品・サービスを考案していきます。そのため、社内の知識やリソースだけでは見いだせなかった潜在的ニーズを発掘できたり、今までなかった発想により新たな商品が生まれたりする可能性があるのです。
継続的な品質向上によってファン層が増える
消費者と協力して行う共創ビジネスでは、商品・サービスを提供後も消費者の声を吸い上げることで、継続的に質を高めていけます。品質が向上すれば、新たなファン獲得にもつながるでしょう。また、消費者としても自身の声が継続的に生かされていることで、商品・サービスへの愛着心が深まります。
商品・サービスを提供して終わりではなく、共創によって継続的な改善を重ねることで、コアファン・新規ファン増加につながる相乗効果を見込めるのです。
インクルージョンによるメリット
次に、インクルージョンによるメリットを2つのポイントに絞り解説します。
多様性の尊重による信頼関係と定着率の向上
従業員同士が個々の多様性を尊重するような社内風土や文化を構築することによって、企業に対する信頼感が深まります。従業員満足度やモチベーションが上がることで、生産性向上にもつながるでしょう。
個性が発揮できる職場環境であれば、離職率も低下し、定着率が向上することが予想されます。
また、多様な働き方を許容することで、有能な人材でありながらも条件が合わず応募できずにいた人が働けるようになるかもしれません。人材の確保に役立つでしょう。
さまざまな意見や提案によるイノベーション創出
同じ考えを持つ人の集団からは斬新なアイデアやイノベーション創出は困難です。したがって、均質性が重視されるような企業は、同じことを繰り返す業務は得意ですが、突然の社会変化に対応できるようなアイデアを具現化するのが苦手です。
その点で、インクルージョンが企業内に浸透していれば、さまざまな意見や提案が尊重されることで新たな視点が加わり、イノベーション創出につながります。そして、多様な人材が所属し活躍できる環境が整備されることによって、現代の多様化かつ複雑化するニーズを正確に把握できるようになるでしょう。
まとめ
多様性が求められる昨今においては、「共創」と「インクルージョン」をうまく併用し、さまざまな立場にいる方々の意見を尊重し、取り入れながら経営を進めることが求められています。
しかし、働き方や給与体系などが多様化・複雑化するほど、管理部門の業務が増え仕事が回らなくなってしまうリスクがあります。そういった場合は、多量なデータ管理や業務効率化に効果的な「Asana」の導入をおすすめします。「Asana」は全世界で導入実績があり、高い評価を得ています。複雑化した勤務形態や給与管理などに関する相談もお受けしておりますので、ぜひ「Asana」にお問い合わせください。
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