企業変革を成功に導きたいものの、どのように変革を進めていけばよいのかわからないという経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、変革を進めていくうえで重要となる「チェンジマネジメント」の概要やメリット、リスクへの対処法、8つのフレームワークについてご紹介します。自社の組織変革に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
チェンジマネジメントとは何か?
チェンジマネジメント(Change Management)とは、企業全体が大きな変革を行おうとする際に、変化に適応できる社員を育てるマネジメント手法のことです。大きな変革とは、新しいリーダーによる方針の変更や業務形態の変更、新たなツールの導入などにより、これまでとは異なる環境、ないし異なる動きをする必要が出てくる状況を指します。
企業を取り巻く環境の変化が激しい現代において、適応力を高めることは重要であり、チェンジマネジメントの考え方を実現するツールとなるのが、後述するフレームワークです。
チェンジマネジメントのメリット
チェンジマネジメントの主なメリットには、次の3つが挙げられます。
- 組織変革で成果を生み出す
- 変化によるリスクを減らす
- 改革を成功につなげる
組織の前向きな変化に抵抗なく適応できる社員が増えることで、組織変革がスムーズに行え、成果を出しやすくなります。適応力のある社員を育てることによって、変化や付随するトラブルへ柔軟に対応できるようになり、変革による混乱を最小限に抑えることが可能です。これらが要因となり、組織の改革が成功しやすくなります。
チェンジマネジメントのリスク対処法
前述のように、チェンジマネジメントにはさまざまなメリットがありますが、変革にあたって適切なリスク対策を講じなければ、なかなか成功にはつながりません。変革がうまくいかない要因としては、次の3つが挙げられます。
- 担当業務を拡大できない従業員
- 自己評価の高い従業員
- 否定的意見を持つ従業員
これらの特徴を持つ従業員はチェンジマネジメントのリスクとなり、変革を阻む要因となり得るため、教育や説得を行うなどの対処が必要です。
担当業務を拡大できない従業員への対処法
従業員が担当業務を広げることに対して否定的で、現状の業務以外を受け入れない場合は、従業員のモチベーションを高めることが必要です。モチベーションを高めるには、従業員の給与や労働条件をはじめ、人間関係を見直したり、キャリアアップのプランを提示したりすることが有効です。
自己評価の高い従業員への対処法
周囲の評価と比べて過剰に自己評価の高い従業員に対しては、他者評価の視点を持たせることが必要です。他者評価とは、業務の結果である売上や実績、顧客からの評価などです。自己評価としてのできることではなく、成したことで評価されることを教育していく必要があります。
否定的意見の従業員への対処法
アイデアを出したり、指示を出したりするたびに否定的な意見ばかりを述べる従業員がいると、仕事が前に進みません。否定的な発言をする従業員に対しては、代替案を示してもらうなど、創造的な思考についても意識させることが重要です。否定的な意見をされると感情的になってしまいがちですが、冷静に対処しなければ関係が悪化するだけでメリットはありません。
チェンジマネジメント成功のフレームワーク8選
ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター名誉教授は、チェンジマネジメントの8段階モデルとして以下のフレームワークを提唱しています。
- 危機管理・緊急性を明確にする
- 変革推進チームを構築する
- 変革ビジョンと戦略を決める
- 変革ビジョンを従業員に共有する
- 変革に対処できる環境を整備する
- 短期的目標を設定し達成する
- 変革の推進をさらに継続していく
- 変革による新しい手法を定着させる
チェンジマネジメントの成功を収めるには、これらのフレームワークに基づき変革に取り組むことが重要です。
①危機管理・緊急性を明確にする
緊急性を明確にし、危機感を共有することが、組織の変革において重要なポイントです。組織が変革を図るのには緊急の理由があり、現状維持は企業にとって危機を招くことを、従業員に説明する必要があります。組織全体の危機意識を統一することにより、従業員は変化の必要性に気付き、納得して行動へ移すことができます。
②変革推進チームを構築する
変革のプロセスを熟知し、実行力のある変革推進チームをつくることで、素早く実現できます。変革推進チームのメンバーには、変革への対応力のある人材を選びましょう。変革推進チームの人材として必要な要素は、次の5つです。
- スキル
- 評価
- 決定権
- 信頼性
- コミュニティ
実行力や変革の知識といったスキル、決定権がなければ、変革を進められません。仕事に対する高い評価や信頼性も、周囲の人を動かすのに必要となる要素です。コミュニティを持っていれば、人脈によって変革に必要な助けを得られる可能性が高まります。
③変革ビジョンと戦略を決める
変革ビジョンと戦略の策定は、変革の成否を分ける重要な要素です。変革ビジョンを明らかにすることで、組織がどのように向かっていくのかを従業員へ示すことが可能となり、組織の方向性を統一でき、モチベーションも高められます。また、変革に向けた具体的な戦略が定まっていないと、変革の実現は難しいでしょう。これらを踏まえると、次の6つが変革ビジョンに必要な要素として挙げられます。
- 可視化できる
- 実現可能
- 方向性が明確
- メリットがある
- 方向転換が可能
- 簡潔に伝わる内容
④変革ビジョンを従業員に共有する
変革ビジョンを明確にしたら、従業員へ周知徹底し共有することが必要です。変革ビジョンの共有によって、組織が一丸となって改革に取り組めるようになります。組織全体へ広く拡散するには、社内広報誌への掲載や業務ツールにて共有するなどの方法があります。また、変革ビジョンの重要性に関する説明会の開催も必要です。
⑤変革に対処できる環境を整備する
変革ビジョンの実現に向けて、変革に対処できる環境の整備を行います。環境整備とは、従業員が変革ビジョンを実現しようとする自主性を促すものであり、変革を阻害する要因を考え、取り除いていくことです。変革に反対する従業員への対処や教育方針を決めておきましょう。変革をできるだけ早く実現するために、DX推進によって業務プロセスの見直しを行い、効率化を図ることも重要です。
⑥短期的目標を設定し達成する
変革ビジョンを細かいステップに分けて短期的な目標を設定し、ステップごとに達成していくようにして実現します。短期的な目標を設定することによって、途中経過が把握しやすくなり、不測の事態に対しても柔軟に対応しやすくなります。短期目標の進捗状況は組織全体で共有し、目標を達成した従業員には報酬を与えるなど、賞賛することでモチベーションを高めることが可能です。
⑦変革の推進をさらに継続していく
変革ビジョンの実現に向けて動きだしたら、停滞することなくプロジェクトを前に進めていくことが重要です。計画が停滞すると、従業員の変革ビジョンへ向けて行動する意識が薄らいでしまうため、変革推進チームが主体となって、計画が進行中であるという雰囲気をつくる必要があります。
そのため、進捗状況のモニタリングや共有を行い、達成度合いや貢献度に対する評価を続けていかなければなりません。また、変革のプロセスとして人事採用や教育も視野に入れたり、業務ツールの導入などインフラ変革の動きをしたりすることも必要です。
⑧変革による新しい手法を定着させる
変革による新しい手法の定着によって、変革していく企業風土を醸成します。持続的に変革を行うために、変革で得られた実績や変革のため行った取り組みを従業員と共有し、変革プロセスを組織全体で理解できるようにしましょう。変革プロセスへ取り組むにあたっては、プロセスを推進していけるリーダー候補の育成が必要です。
まとめ
チェンジマネジメントに取り組むことで、変革に対して抵抗なく適応できる組織を構築でき、ひいては企業が市場環境の変化への柔軟な対応力を得ることにもつながります。チェンジマネジメントを阻害するリスクとなる従業員に対しては、意識改革を促す教育を行う必要があります。推進には8段階モデルを活用し、企業風土としてチェンジマネジメントの手法を定着させることが大切です。チェンジマネジメントを行う際には、全体を見える化できる管理ツール「Asana」の導入がおすすめです。
- カテゴリ:
- BPR・変革管理