プロジェクトの開始から完了までを四つのフェーズに分けて、管理しやすくするプロジェクトライフサイクル。この特徴や手法を理解することで、円滑にプロジェクトを進められます。
本記事では、プロジェクトライフサイクルの定義やプロダクトライフサイクルとの異なる点、フェーズごとの行う内容や3つの種類を解説し、おすすめのツールも紹介します。
プロジェクトライフサイクルとは
プロジェクトは、その目的や種類に関わらずいくつかのフェーズを経て完了します。プロジェクトを進める際に起こるフェーズの変遷である「プロジェクトライフサイクル」は、そのプロジェクトが開始されてから完了に至る過程のことです。プロジェクトは四つの包括的フェーズに基づき、それぞれ「開始」「準備」「作業」「完了」に分けられます。このサイクルにはチェックポイントが設定され、各チェックポイントにおいて成果物を確認し、品質に問題なければ次の段階にプロジェクトが進みます。
プロダクトライフサイクルとの違い
プロジェクトライフサイクルと混同されがちなのが、「プロダクトライフサイクル」です。プロダクトライフサイクルは、企業の製品やサービスが市場に登場し、衰退するまでの過程を指します。プロジェクトライフサイクルとは異なる「導入期」「成長期」「成熟期」「飽和期」「衰退期」の5つのフェーズに分けられ、「製品ライフサイクル」とも呼ばれます。プロダクトライフサイクル内の製品開発などはプロジェクトライフサイクルの一種です。
プロジェクトライフサイクルを理解するメリット
プロジェクトを円滑に進めるためには、プロジェクトライフサイクルを理解する必要があります。なぜなら理解することで、各フェーズにおいて必要な作業が明確化するからです。また、適切なプロジェクト管理が行われることで、資金ならびにリソースの無駄を防げます。リソースの効率化が実現すれば、生産性の向上を図ることができ、競争優位性を高められます。
また、よくあるプロジェクトの失敗理由に、コミュニケーション不足があります。各フェーズにおいて、プロジェクトマネージャーやリーダーが適切に管理することでコミュニケーションも活性化し、プロジェクト完了まで円滑に進められます。
プロジェクトライフサイクルにおける各フェーズの特徴
以下では、プロジェクトライフサイクルの「開始」「準備」「作業」「完了」までの各フェーズの特徴を詳しく解説します。
開始
プロジェクトの開始において、「プロジェクトの定義づけ」を行います。製品やサービスなどの成果物を特定し、プロジェクトで解決すべき課題やその課題が解決できるかの調査や、プロジェクトを進める上で影響を受けるステークホルダーの把握などです。また、大まかなスケジュールや必要な予算も決定します。
さらに、プロジェクトに携わるメンバーの顔合わせに加え、プロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダーの任命も、このフェーズで行うことがあります。これらをまとめて業務記述書を作成し、プロジェクトオーナーとメンバー間で合意に達すればプロジェクトが開始されます。
準備
準備のフェーズでは、一般的に「プロジェクトの計画書」を作成します。まず、プロジェクトの目的やゴールを設定し、作業全体のスコープの特定、実行するタスクの特定、各フェーズにおける品質レベルの決定、体制図の作成などです。また、必要なツールなどのリソース収集やリスク予測をし、回避のための計画立案もこのフェーズで行います。
このフェーズで中心となるのはプロジェクトマネージャーです。マネージャーは計画書が作成できたら、キックオフミーティングを開催し、メンバーにプロジェクト計画の概要を説明します。承認が得られれば、作業のフェーズに進みます。
作業
計画書に沿って実際に作業を進めるフェーズです。このフェーズでは、プロジェクトマネージャーおよびプロジェクトリーダーが作業の進捗状況をモニタリングしたり、問題発生の有無を確認したりします。必要であれば、チームメンバーの増員や配置の調整、スケジュール調整も行います。
ここで重要なのは、メンバーからのヒアリングです。作業を進める上での困りごとや問題点を聞き取ることは、効率的なプロジェクト運営には欠かせません。これには、定期的にミーティングを行ったりヒアリングする場を設けたりすることがおすすめです。行うことでメンバーのモチベーション維持やコミュニケーションの活性化が図れます。
完了
プロジェクトの最終段階であるこのフェーズでは、完成したすべての成果物の最終確認を行い、クライアントへ引き渡します。引き渡しが終われば、正式にプロジェクトの完了です。完了後は、次回のプロジェクトに向けた課題としてフローを振り返り、分析やまとめを行うことが重要です。
プロジェクトライフサイクルの種類は3つ
プロジェクトライフサイクルでは、大きく分けて3つの種類があります。プロジェクトの目的を明確化することで、どの種類が適切かを判断できます。
予測型ライフサイクル
予測型ライフサイクルは、プロジェクトの予算策定やスコープの特定、スケジュールの見積もりを初期のフェーズで行うことが特徴です。ウォーターフォール型ライフサイクルとも呼ばれており、この後のフェーズで達成するべき目標も細かく設定します。このことで、プロジェクトの全体像が固まり管理しやすくなりますが、プロジェクトが進むにつれて、問題点が発覚し修正する場合のコストが大きくなる恐れがあります。
反復型・漸進型サイクル
反復型・漸進型サイクルは準備と作業をひとつのセットにし、それを繰り返すことでプロダクトへの理解を深める手法です。また、繰り返しの過程で、少しずつ成果物に機能を追加できます。プロジェクトを一気に完成まで進める予測型の弱点を克服した形態です。すべての要件をそろえることなくスタートでき、問題発生にもコストをかけず柔軟に対応できるというメリットもあります。
適応型ライフサイクル
反復が短期間で行われるタイプです。別名アジャイル型とも呼ばれ、作業に重点を置きながら2~4週間という短期間で実装・リリースを繰り返します。加えて、コストおよび時間は固定化されています。適応型は、ニーズの変化が激しいシステム開発や、事前に要件を決定することが難しい場合に用いられ、変更やステークホルダーの要求などにもすぐに対応できるという特徴があります。
まとめ
開始から完了までを円滑に進めるための手法であるプロジェクトライフサイクルは、フェーズごとにやるべき項目があり、サイクルの種類によって異なります。どの種類が最適なのかを判断するためには、プロジェクトの特徴や目的の明確化が重要です。
プロジェクトライフサイクルを理解し、効果的に管理することで、コストやリソースの削減、メンバー間のコミュニケーションの活性化にもつながります。一方で、プロジェクトに最適なサイクルを選定しないと、プロジェクトが進むにつれ問題点が修正しにくくなり、コストも大きくなるという側面もあります。
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