レピュテーション・マネジメントは、企業の評判を維持・向上させるために必要な活動のことです。なぜレピュテーション・マネジメントが必要とされているのか、企業の評判は経営活動にどんな影響を与えるのか、また導入方法についても解説しています。
レピュテーション・マネジメントの概要
レピュテーション・マネジメント(Reputation management)とは、日本語で「評判管理」の意味を持つ、企業が評判を維持・向上させるためのマネジメント活動のことです。現在ではさまざまな本も発売され、多くの企業や大学などもレピュテーションの向上に注目しています。
レピュテーション・マネジメントは、自社の評判や企業イメージを向上させるために行う日々の広報活動から、社内で不祥事などのトラブルが発生した際の謝罪会見といった危機管理的なものまで、さまざまな活動を指します。とくにトラブル発生時などには、評判が下がり始めた段階でイメージの悪化を止めるため、早めにレピュテーション・マネジメントで対策を取ることが重要です。
レピュテーション・マネジメントが必要とされる背景
これまでは個人が幅広く情報を発信する場所がなかったことから、個人目線のあいまいな情報や噂などが社会に大きく広がるケースは多くありませんでした。ところが近年では、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの普及により多くの人がインターネットやSNSを利用して簡単に情報を発信できるようになり、それらの情報が支持される時代に変化しています。
手軽に情報の発信や収集ができる半面、不確かな情報や誤った情報、誤解を生む表現などが何かのきっかけで拡散されてしまう問題もあります。インターネットやSNSでの評判には誤った情報から作られるものもあるかもしれません。そのため、企業は本来の営業活動だけでなく、自社の評判に問題が発生していないか確認し、対策を講じるためにレピュテーション・マネジメントを行う必要があります。
レピュテーション・マネジメントの目的
たとえ事実とは異なる噂であっても、一度自社に関する悪い情報がSNSで炎上・拡散されてしまうと、企業イメージの悪化や風評被害が発生する恐れがあります。企業イメージの悪化などのトラブルは、顧客離れや利益の低下といったさまざまなダメージにもつながり、倒産に至るなどの重大な問題にも発展しかねません。こういったレピュテーションリスクへの対応や企業のイメージ向上などのために、多くの企業でレピュテーション・マネジメントの導入が進められています。
また、レピュテーション・マネジメントは、企業やブランドのイメージ向上、好感度アップにも大きく影響します。さまざまな評判から自社に対する意見や顧客のニーズを知ることができ、もともとは好意的ではなかった相手に対して関係改善を目的としたコミュニケーションを取るためにもレピュテーション・マネジメントを活用できます。
レピュテーション・マネジメントの導入方法
レピュテーション・マネジメントは、現状を維持・向上させる「攻め」、トラブル発生時の信頼回復を目的とする「守り」の2種類を導入し、効果的に活用することにより、顧客や株主、取引先、従業員まで幅広い関係者に対して理想的な企業のブランディングを実施できます。
レピュテーション・マネジメントの専門企業に依頼する
レピュテーション・マネジメントの導入は、専門企業へ依頼するとより効果的に行えます。これまでにもさまざまな導入事例を取り扱ったことのある専門企業の力を借りれば、その知識とノウハウからスムーズな導入が見込めるでしょう。
レピュテーション・マネジメントは企業の経営陣や担当者だけが実行するものではないため、専門企業に依頼した際にも従業員への教育や意識向上などを行うことが大切です。専門家の知識を企業全体で理解、吸収して営業活動に活かせる状態に変えていく必要があります。
不祥事など緊急事態が起きた際の体制をつくる
不祥事への対処は「守り」のレピュテーション・マネジメントに該当します。不祥事などのトラブルが発生した場合には、問題を早急に解決するために迅速かつ適切な対応が必要です。
そのためには、発生する恐れがあるレピュテーションリスクをできる限り想定しておくことが大切です。さらに想定されるリスクに対してそれぞれ対応策を検討し、万が一リスクが発生した際に取るべき体制を構築しておくと、いつでも緊急事態に対応できます。
不祥事によりすでに悪い評判が広がってしまった際には、顧客や取引先などに事情を説明するため、メディアを通して情報を開示する対応が必要です。企業側の発言により広がった悪評が鎮静化できず状況がさらに悪化する恐れもあるため、会見などを開く際には発表する内容や発言に注意しなければなりません。
従業員へレピュテーション・マネジメントに関する教育を行う
企業の悪評や風評被害は、従業員の問題となる行動や態度が原因で生じるケースも多くみられます。従業員にあらかじめレピュテーション・マネジメントに関する教育を行っていると、自社の評判に悪影響を及ぼす行動や態度についての知識が身につき、問題の発生を回避することが可能です。
仕事中に限らず普段の生活においても、従業員が社会通念上望ましくない行いや発言をしている場合には、自社のネガティブな評判が広がる恐れがあります。社員という枠組みにとらわれず、アルバイトを含む従業員全員に対し、社会人として問題ある行動は周りから見られているものだと教育することが大切です。レピュテーション・マネジメントを常に意識して行動できるように、企業は教育により知識の浸透や従業員の意識改善を行いましょう。
また、従業員に対してストレスとなる労働環境の改善を行ったり、採用時に個人の行動や態度に対する選考基準を設けたりするなど、企業側の努力や工夫も必要です。
ブランドイメージを高める情報発信などの広報活動
ブランドイメージ向上は、「攻め」のレピュテーション・マネジメントの中心となる活動です。広報活動によって自社のブランドイメージを高め、ブランドアイデンティティを確立できると、ブランドの価値も向上します。
自社のブランドを確立させるまでには、製品やサービスの広告だけでなく、ブランディング広告などでメッセージや企業姿勢をアピールして浸透させることが大切です。適切なブランディングがレピュテーション・マネジメントの効果を高め、知名度や評判が向上して存在感のある企業、ブランドの運営が可能になります。
対話チャネルの設定
レピュテーション・マネジメントは、顧客、株主、取引先、従業員などすべてのステークホルダー(利害関係者)を対象に行います。このステークホルダーとコミュニケーションをとる活動は「コーポレート・コミュニケーション」と呼ばれています。風評被害などのトラブルが発生していないときでも、日常的に企業の良い評判を維持・向上させるための活動は必要です。
ステークホルダーとのコミュニケーションを円滑に行うために、SNSや電話、チャットなど複数の窓口を設けます。平常時にも、SNSなどから企業の情報をこまめに発信し、自社に対する意見を受け取って今後の経営活動に取り入れることが企業のイメージアップにつながります。
レピュテーション・マネジメントの事例
レピュテーション・マネジメントを実際に活用した企業に関して、成功事例と失敗事例をそれぞれ紹介します。実際に取り入れる際には、事例を参考にポイントをおさえて行う必要があります。
レピュテーション低下による影響を受けた飲食店A社
有名な飲食チェーン店のA社は、2016年にレピュテーション低下により経営破産しています。原因は2013年に店舗のアルバイト従業員が行った悪ふざけ動画でした。従業員が厨房の冷蔵庫に入り込むなどの不衛生な行動を動画に撮り、SNSにアップしたことが社会的に非難される大きなニュースに発展しました。
A社は謝罪文を発表しましたが、この騒動から評判が持ち直すことはなく事業停止に至る結果となりました。
レピュテーション低下を回復させた製薬関連B社
レピュテーション低下から「ビジネス史上最も優れた危機対応」により迅速な信頼回復に成功したのが、ヘルスケア製品の販売を手掛けるB社の事例です。1982年、同社の商品に何者かが毒物を混入して犠牲者が出た凄惨な事件が発生して、B社はレピュテーション低下により倒産寸前まで追い込まれました。
その状態からも、B社は消費者保護のため商品の自主回収、新聞やテレビによる広告、相談窓口の開設などを行い信頼回復に努めました。その結果コンプライアンス意識の高さが評価され、B社はトラブル発生から2ヶ月後には売り上げを事件前の80%まで回復させています。
まとめ
レピュテーション・マネジメントは、現代社会ならではのリスクに備え、企業の成長を助けるために欠かせません。社内全体でレピュテーション・マネジメントに関する意識を高めるためには、従業員の業務負担軽減や教育の徹底が必要です。
ワークマネジメントツール「Asana」を導入すると、業務効率化、生産性向上に貢献し社内の業務負担軽減が期待できます。業務環境の改善により生まれた余裕を使って、企業の生産性向上につながるレピュテーション・マネジメントに取り組むことが可能です。
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