日本企業は現在、DXの推進やテレワークの採用を筆頭に、急激な働き方改革を求められています。そのような変化の只中において、多くの企業は生産性の維持ないしは向上に課題意識を感じていることでしょう。そこで本記事では、労働生産性の向上させるポイントについて詳しく解説していきます。
労働生産性とは
労働生産性という言葉は、長時間労働や業務効率の改善などを議論する際によく耳にする言葉ですが、しっかりとした計算や指標に基づいて使われていることは、案外少ないのではないでしょうか。
生産性とはそもそも土地や設備、原料、人員などを費やした「投入(コスト)」に対して、どれほどの「産出(利益)」を挙げられたかを表す指標です。計算式としては「生産性=産出÷投入」で示されます。転じて、労働生産性とは「労働成果(産出)」を、就業人数や労働時間などの「労働量(投入)」で割ったものであると言えます。
つまり、労働生産性とは「時間当たりの労働成果」ないしは「一人当たりの労働成果」の割合を指す経営指標なのです。
極端に言えば、これまで1時間でやっていたことを30分でできるようにしたり、これまで2人でやっていたことを1人でできるようにしたりすれば、労働生産性は2倍になります。それは当然、企業にとって経営効率の改善に直結するものです。
こうした労働生産性向上には、実際に多くの会社がさまざまな角度からアプローチしています。そこで特に重要となっているのは、作業工程の見直しや便利なツールの導入などによる「業務効率化」です。
日本は世界でも労働生産性が低い国である
一般にも知られているように、日本は世界で労働生産性が低い国であると言われています。特に主要先進国の中では、現状の水準・上昇率共に最低レベルに留まっています。
労働生産性の低さは効率が悪い仕事の仕方をしていること、あるいは長く働いているだけで無駄な時間が多いことを示すものです。働き者が多いことで知られる日本で、なぜこのような無駄が多くなってしまうのでしょうか。
平成28年度の厚生労働省の調査報告「労働経済の分析」によると、日本は主要国と比較して「①ソフトウェア等のIT 関連である情報化資産への投資」「② OFF-JTを始めとする人的資本への投資が弱い」傾向があり、これが労働生産性の低さに関係していると指摘されています。
この「OFF−JT」とは集合研修やグループワークなどを通して、日常業務からは体系的に学びにくい業界知識やビジネス知識の基礎、理論を学ぶことです。つまり上記の指摘は、日本社会の労働生産性の低さの主な原因として、「ITをうまく活用できていないこと」「広い視点からの人材育成が十分に実現されていないこと」を示しているのです。
労働生産性を向上する方法
労働生産性を向上させるためにはどうしたらいいのでしょうか。以下では、企業が労働生産性を上げる方法を4つ厳選して紹介します。
ITツールの導入
労働生産性を向上させるための第一の方法はITツールの導入です。ITツールはビジネスチャットなどの利用における情報共有の効率化を始め、仕事のスケジュールや労務面の管理も含んだマネージメント業務、ルーティン的な単純作業の自動化など、さまざまな面で業務の効率化に役立ちます。昨今ではRPA導入によって、PC上で行える作業をロボットが肩代わりしてくれることも可能になってきています。これを活用すれば人間にしか不可能な作業に、従業員は専念できます。
上記でも触れたように、日本は先進国の中でもITツールの活用において遅れを取っています。しかし、DXやテレワークが社会的に推奨される現在、あるいは少子高齢化社会が進行し働き手不足になることが予想される将来を鑑みても、ITツールの活用は日本企業にとって今後欠かせません。
人事評価制度の見直し
日本の労働生産性が低い理由の1つには、慣習化されている人事評価制度が影響している場合が多いとも言われています。例えばその最たるものが、人事評価に勤続年数を反映する一種の年功序列的な考え方です。
従業員からしてみると一所懸命に生産的に働いても、それに見合った報酬や立場、評価が得られないなら、楽な方向に走ってしまうでしょう。そして、有能で自分の能力を活かしたいと考えている従業員ほど、ほかの企業への転職を考えてしまうかもしれません。こうした事態を防ぐために大事になるのが人事評価制度の見直しです。
労働生産性を高めるために有用な人事評価制度としては、「コンピテンシー評価」「目標管理制度」「360度評価」などが挙げられます。自社が今後どのような働き方や従業員を模範としていくのか、自社ないしは各部門の業務内容に適した人事評価制度はどのようなものなのかなど、従業員が目的意識と納得感を得やすい人事評価制度を導入することは、労働生産性の向上をするためにも重要です。
ノンコア業務の外部化
ノンコア業務の外部化とは、企業活動において直接利益につながらない業務をアウトソーシングすることです。
「誰でもできるけど誰かがやらないといけない業務」というのはどこにでもあります。そして、そうした業務に時間を取られて、もっと重要な業務、その従業員の能力を最大限に活かせるような業務に割くべき時間が犠牲になることもまた多くあります。例えばオフィスの清掃作業などはその最たるものですし、従業員の勤怠データ管理などの日常的な事務作業もこれに当たるでしょう。
こうした業務を外部化することで、従業員は自分が本来取り組むべきコア業務に専念することが可能になり、生産性の向上が期待できます。また、安価な企業にノンコア業務を外部委託することで、場合によっては人件費の削減も期待されるでしょう。
働き方改革の推進
従業員の労働生産性を向上するためには、従業員のモチベーションや働きやすさに配慮することも大切です。つまり、就労環境や就労形態の見直しなどを図る「働き方改革」がここで重要になります。
テレワークやフレックス制度、あるいは副業の許可など、従業員のニーズに即した労働環境を提供することは、従業員のワーク・ライフ・バランスの健全化に寄与し、仕事へのモチベーションを高めます。またこうした良質な、労働環境は有能人材を呼び込みやすくすること、そして企業の持続的な発展にも貢献してくれるのです。
「労働生産性の向上」というと、システマティックな冷たい響きを感じてしまうかもしれません。しかし、従業員に寄り添った働き方改革を行うことでもその達成は期待できるのです。そうした改革推進は、企業にとっても、従業員にとっても多くのメリットをもたらすものとなるでしょう。
まとめ
本記事では、日本企業の課題となっている「労働生産性」について、その概要と課題、向上の方法を解説しました。
労働生産性を向上させるためには、ITツールやアウトソーシングの活用などによる「業務効率化」のほか、人事評価制度の見直しや働き方改革による「従業員のモチベーションの向上」ないしは「意識変革」が重要になります。いずれにせよ、労働生産性を向上させるためには、自社の現状や問題点を的確に把握し、絶えず改善し続けなければなりません。
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