昨今、企業経営に際してダイバーシティという言葉を耳にする機会が増えています。ダイバーシティとは一体何か、なぜそれを重視するべきなのか、企業にとってどのようなメリットがあるのか、具体的な例を交えながら、詳しく解説します。
ダイバーシティは多様性を意味する
ダイバーシティ(英:diversity)とは、「多様性」を意味する言葉です。その語源は、ラテン語で「向かう」を意味するvertereに否定の接頭辞disがついたもので、元は「異なる方向へ向かう」人々を指しました。
ビジネスの場においては、性別、人種、文化、宗教、価値観など、それぞれの人が持つ個性の違いを尊重し、組織の中へ受け入れる姿勢を指します。
「インクルージョン」も押さえよう
ダイバーシティと並んでよく用いられる言葉に、インクルージョン(英:inclusion)があります。「受容性・包括性」を意味し、身体的または知的障害のある人や、他のマイノリティな属性を持つ人など、排除または疎外される可能性のある人々に、平等な機会と場所を提供する姿勢のことです。
企業の経営においてもダイバーシティの重要度が増している
近年、企業を取り巻く市場環境は大きく変化し、経営上の不安が増大しています。働き方改革の一環として、経営におけるダイバーシティの重要性も増してきました。これには、大きく分けて3つの要因が挙げられます。
- グローバルな競争激化によって、グローバルな人材の確保と活用が不可欠となったこと。
- 産業構造変化の加速化によって、リスクへの対応と、イノベーションの創出が課題となったこと。
- 少子高齢化による絶対的な人材不足に伴い、人材の母集団そのものを拡大する必要が生じたこと。
経済産業省の「ダイバーシティ2.0」は経営における重要性を説明している
日本政府もこの事態に着目しており、経済産業省は2020年9月に「ダイバーシティ2.0」という資料を発表しました。
同資料は、“多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指し、全社的かつ継続的に進めて行く経営上の取組”の重要性を指摘しています。
引用元:経済産業省「ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ」
今や、ダイバーシティは企業経営において不可欠の要素なのです。
企業経営におけるダイバーシティ推進のメリット4つ
実際の企業経営において、ダイバーシティを推進することで、どういった利点があるでしょうか。前述のダイバーシティ2.0に従えば、以下4つのメリットが挙げられます。
メリット①:人材獲得量の向上
第一に、多くの人材を確保できる可能性が指摘されます。
PwC合同会社が2015年に実施した調査によれば、ミレニアル世代(1981年から1996年生まれ)の人材は、就職先を選ぶ際に、企業のダイバーシティやインクルージョンを重要視する傾向があります。特に女性はこの傾向が顕著です。
また、彼らミレニアル層はより高度な教育を受けた人材の比率が高く、活躍の機会を渇望している傾向があります。このことから、即戦力としての価値が高いことが指摘されています。
これらのことから、ダイバーシティに力を入れている会社には、優秀な人材が集まりやすいと言えるのです。
メリット②:リスク管理能力の向上
第二に、多様な人材を確保することで、リスク管理能力の向上につながる可能性が指摘されます。
一例として、ジェンダーにおけるダイバーシティに着目してみましょう。クレディ・スイス銀行が2019年に実施した調査によれば、女性取締役が1人以上いる企業は、1人もいない企業に比べて、金融危機からの回復力が強いことが確認されています。
多様な人材を確保することで、会社が危機に陥っても、いち早く復帰できる可能性があるのです。
メリット③:経営陣の監督機能向上
第三に、経営陣の監督機能が向上する可能性が指摘されます。
金融庁と東京証券取引所が2015年に策定した、コーポレートガバナンス・コード(上場企業が行う企業統治において、ガイドラインとして参照すべき原則・指針のこと)においても、多様性は監督機能を保つための前提条件とされています。同報告によれば、取締役会は、その役割を実効的に果たすために、知識・経験・能力をバランス良く備える必要がありますが、多様性を確保することによって、これらの条件を効率よく満たせます。
つまり、経営陣に多様な人材を擁することによって、経営の健全性を長く維持できる可能性があります。
メリット④:イノベーション創出の促進
第四に、多様な人材の増加は、イノベーションの向上にもつながる可能性が指摘されます。
ボストン・コンサルティング・グループが2018年に実施した調査によれば、管理職の多様性とイノベーション成果との間には、有意な関係があることが示されています。
また、クレディ・スイス銀行の調査でも、同族会社において、10%以上の女性取締役がいる企業は、2014年以降、男性取締役しかいない企業に比べて年間約410ベーシスポイントの優位性が確認されました。
金融庁も、“社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る”との指摘を行っています。
(引用元:https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000000xbfx-att/nlsgeu0000034qt1.pdf)
すなわち、ダイバーシティは企業の生産性とイノベーションにも直結する可能性があるのです。
ダイバーシティを経営で推進する際のポイント4つ
ダイバーシティ2.0では、重視するべき4つのポイントを指摘しています。
①中長期的・継続的な実施と、経営陣によるコミットメント
第一に、ダイバーシティ推進は一回行って満足するのでなく、中長期的に取り組み続けることが大事です。
またその舵取りにあたっては、経営陣もダイバーシティの意義について理解し、多様性を活かせるマネジメントスキルを磨くべく、定期的な講習会を実施したほうが良いでしょう。
② 組織経営上の様々な取組と連動した「全社的」な実行と「体制」の整備
第二に、推進は個々人が散発的に行うのでなく、社全体で継続的に取り組んでいく必要があります。
経営企画部門や人事部門と連携し、経営レベルの体勢を構築していくと良いでしょう。その際にも、経営トップがプロジェクトリーダーとして、取組の実行に責任を持つことが重要です。
③ 企業の経営改革を促す外部ステークホルダーとの関わり(対話・開示等)
第三に、外部への情報発信を行い、ステークホルダー(外部の利害関係者)との対話によって、対象となる人材とのコミュニケーションをとることが重要です。
そのためには、最適な人的資源の構成を検討し、その実現に向けて、採用、育成、登用まで一貫した人材戦略を策定する必要があります。その内容と成果を労働市場に発信することで、情報の受け取り手とのコミュニケーションを深め、自社が獲得したい人材に対して効果的な訴求が可能です。
④ 女性活躍の推進とともに、国籍・年齢・キャリア等、様々な多様性の確保
第四に、ライフスタイルや価値観が異なる人材が活躍できるよう、多様なキャリアパスを社内に構築することが重要です。
そのために、それぞれの生き方やワークライフバランスに合わせた就業形態を用意し、個の生活に寄り添った柔軟な働き方が可能になるよう提案していきましょう。その際には、適切な指示とサポートによって、個々人の活動に対する主体的な意識を育むことも重要です。
まとめ
これからの社会において、健全に企業を運営するためには、ダイバーシティの実現が重要です。画一的でない多種多様な人材を確保することによって、様々な恩恵を得られることが統計的にも証明されており、その有用性は数多の大企業や省庁も認めるところです。
しかし、多様性を確保するためのシステムを構築し、出来上がった体制をメンバーと運用していく際には、ある程度の技術とノウハウが必要です。
この時、Asanaの利用が助けになるかもしれません。Asanaを用いれば、平易な操作でプロジェクトのメンバーと連携をとることが可能です。それにより、システムの構築に関わる作業を効率化させ、円滑に企業を運営できます。
- カテゴリ:
- 業務のヒント
- キーワード:
- 経営