業務改革とは?業務改善との違いや実践ポイントを解説

 2021.10.15  2022.09.02

社会的にDX働き方改革の推進などが推奨される中、業務改革(BPR)に取り組む企業が増えています。しかし、業務改革は業務改善とどこが違うのでしょうか。本記事では、業務改革を実施したい企業様向けに、業務改革の定義や、業務改善との違いや実践的な進め方について解説します。

業務改革とは?業務改善との違いや実践ポイントを解説

業務改革とは

業務改革とは、英語圏では「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」と表現されます。BPRの概念は、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー博士と、経営コンサルタントのジャイムス・チャンピー氏の著書「リエンジニアリング革命」がベストセラーになったことで1990年代初頭に一気に注目が集まりました。

日本語では、BPRは「業務プロセスの再設計」を意味します。「再設計」という言葉からも示唆されるように、BPRの根底には、既存の業務プロセスを一度白紙に戻してゼロから設計し直そうとする思想があります。それゆえBPRに向けた取り組みは大掛かりになることが多く、ときには企業の中核となる業務プロセスやビジネスモデルを抜本的に再設計し、業務効率性や生産性を劇的に改善していきます。

業務改革と業務改善の違い

業務改革と混同されがちな概念に「業務改善」があります。業務改革も業務改善も、自社の業務プロセスをより良くするための取り組みであることに変わりありません。しかし、両者のアプローチと影響度には大きな違いがあります。

一般的に業務改善とは文字通り、企業の課題を発見・解決して業務効率化につなげる活動を意味します。つまり、既存の業務をより良くしようとする思考です。たとえば、「これまで1時間かかっていた作業を50分でできるようにしよう」など、日常の作業効率を少しずつ良くしていく活動が挙げられます。それゆえ「業務改善に取り組もう」と言われて反対する従業員は少ないでしょう。

一方、業務改革にはしばしば大きな破壊が伴います。既存のスキームを一度壊して、システムそのものを刷新する活動が業務改革です。コツコツ成果を積み上げていく業務改善とは異なり、業務改革は一度の変化で劇的な改善を引き起こし、その後の業務プロセスに影響を及ぼし続けます。現場に与える影響度は業務改善に比べて甚大になるため、業務改革にはしばしば反対者を伴います。それゆえ、業務改革は気軽に取り組めるものではありません。言い換えると、既存のシステムをより良くする業務改善に対して、業務改革には既存のシステムを一度壊して丸ごと作り直すというプロセスや影響度の面で違いがあります。

業務改革の必要性

BPRの概念は、マイケル・ハマー博士らが著書を発表してそれほど時間を経ずに日本にも広まりました。時代はちょうどバブル崩壊後の1990年代。日本企業が否応なしにビジネスの仕方を変えざるを得なかった時代です。しかし、日本におけるこの第一次BPRブームは成功とは言い難い結果に終わりました。BPRを盾に日本企業が行ったのは大量のリストラに過ぎなかったのです。それらは前向きな改革と言うよりも、経営危機から逃れるための苦渋の決断でした。

現在、日本におけるBPRの必要性が再び高まっています。その理由としては、IT技術の発展の影響を受けたDX推進のほか、将来の少子高齢化を見据えて働き方改革の必要性が増している実態が挙げられます。特に働き方改革においては、「長時間労働を是正しつつ生産性を維持・向上せよ」という一見無茶な要求が企業に課せられています。この難しい要求を達成するには、小手先の改善だけでは間に合いません。既存の業務プロセスとはまったく異なったアプローチ(=BPR)が求められるのは必然と言えるでしょう。

また、新型コロナウイルスのパンデミックも見逃せない要素です。日本は現在、感染症を避けるためにテレワークや非接触型のビジネスニーズが増えています。ここでも既存のビジネスモデルからの脱却が強く求められています。

企業には、社内で培われた独自のノウハウや企業文化が存在します。それらは企業の個性をつくるものでもありますが、変化の激しい時代においては足枷にもなる可能性も否定できません。自社のこれまでの仕方が時代にコミットしていないと感じている場合は、BPRを検討する必要があります。

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BPR導入のメリット

BPRによって企業が得られる主なメリットとしては、「意思決定の迅速化」や「生産性の向上」、「従業員の意識改革」などが挙げられます。これはBPRが業務プロセスをゼロベースで再構築するため、指揮系統や組織構造そのものの変革までを含める点に着目すると理解しやすいでしょう。

まず、BPRを実践するにあたっては、複雑すぎてボトルネックになっていた組織の意思決定プロセスが見直されることも多く、多くのケースで意思決定の迅速化が達成されています。もちろん、全社レベルで従来の仕方を見直して製造プロセスやサービスの提供プロセスも同時に変革していくことで生産性の向上も見込めます。さらに、こうした大掛かりな変化によって会社側の方針が従業員に伝わるため、社員の意識改革にも寄与します。これらのメリットが旧体制の延長で達成されるのではなく、新しい仕組みが密接に関わり合って達成される点こそ、BPRが破壊を伴うと言われる所以です。

BPRでありがちな失敗例

大きな変化を必要とするBPRは、ときに失敗することもありえます。BPRの失敗の主な原因として「現状把握の甘さ」「見切り発車」「改革の意義が共有できていない」などが挙げられます。これらはいずれも準備の不足が招いているものです。

たとえ非効率性が存在するにせよ、現状の業務が現状の形で落ち着いているのには何かしらの理由があります。それを十分に理解せず、トップダウンで改革を行っても現場の負担は増すばかりで「改革する前の方が良かった」という結果に陥りかねません。

BPRを成功させるには、まず現状把握を入念にし、改革の効果を予測・試行することから始めます。また、BPRが成功に終わる場合でも、新しいやり方に慣れるまではどうしても現場に負担がかかります。そのため、現場の従業員に改革の意義が十分に伝わっていない場合は反発を受けたり、協力を得られずに思ったほどの効果を得られなかったりする可能性も否定できません。

業務改革を実践するポイント

では、上記のような失敗を避け、企業が業務改革を成功させるにはどのような取り組みをすればいいのでしょうか。続いては業務改革を実践するポイントを解説していきます。

社内全体の共通認識

BPRを実践する際の最重要ポイントは「社内全体の共通認識を得ること」です。BPRを成功に導くためには、役員だけでなく社員の協力が絶対に欠かせません。現状把握ひとつとっても、実際に日々担当している現場の声を聞かずに進めれば、表面的な理解に留まってしまうでしょう。

トップダウンで一方的に改革を断行するようなやり方は、現場の声を無視した身勝手な改革になりかねません。全社的なBPRを真に実現するためには、実践する前に改革の目的や改善案をしっかりヒアリングして、社内の理解を得ながら進めていく方法こそが成功への近道です。

スモールスタート

BPRは企業に劇的な変化を促す取り組みであり、しばしば副作用も大きくなります。はじめから大規模に動かそうとすると失敗時のリスクが高くなり、その時点で改革が頓挫してしまうかもしれません。それゆえ、BPRを実践する際は、慎重を期して一部署での試験導入から始めるなどスモールスタートを心がけましょう。小さくても成功を重ねていくことで、チームも現場もモチベーションを高く保ったまま改革に取り組めます。

BPRの進め方を理解する

BPRは闇雲に進めるのではなく、一定のフレームワークに沿って進める方法がおすすめです。基本的なBPRは「検討→課題抽出→設計→実施→モニタリング」の5ステップから構成されます。

まずは現状把握と現状分析を通して業務改革の目標や実施範囲を設定し、優先度の高い課題を抽出しましょう。その後、その課題を克服するための戦略や業務プロセスの設計をしていきます。代表的な事例としてはITツールの導入による業務の自動化や、ノンコア業務のアウトソーシングなどです。設計を決定したら試験的に一定期間をかけて戦略を実施し、効果測定を行います。そこでポジティブな結果が出たら本格実施に進み、ネガティブな結果が出たら前のプロセスに戻ります。

BPRの実施・モニタリングに当たっては常に最初に設定した目標を意識し、現状の施策がその指針に即しているかどうかに加えて、目標の達成度合いに注意することが大切です。目標がしっかりしていれば、それだけ一貫性のある改革が実現します。

まとめ

業務改革(BPR)とは、既存の業務プロセスを一度破壊し、その後最適なシステムを設計し直す活動を意味します。業務改善が既存の業務プロセスの改良を主とするのに対し、業務改革は抜本的に作り変える点に違いがあります。業務改革を実施する際は、一方的な押し付けにならないように、コミュニケーションを取りながら現場の実情を正確に把握することが欠かせません。

その際にプロジェクトマネジメントツールの「Asana」など、ツールの力を借りるのもよいでしょう。「Asana」は、チーム全体の仕事状況を「見える化」し、他のメンバーとの連携を促進するITソリューションです。チームメンバーと密に連携しながら業務改革を実行することでBPRの失敗リスクを軽減できるので、ツールの活用もぜひ検討してみてください。

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