エフェクチュエーションとは?起業に活かせる行動理論を紹介

 2022.06.07  ワークマネジメント オンライン編集部

近年、コロナ禍で人々の生活様式が変化する中、ビジネスの在り方も変革のときを迎えています。そこで注目を浴びているのが「エフェクチュエーション」という意思決定理論です。本記事では、「エフェクチュエーション」の概要、「コーゼーション」との違い・併用する重要性を解説します。

エフェクチュエーションとは?起業に活かせる行動理論を紹介

エフェクチュエーションとは

Effectuation(エフェクチュエーション)とは、優秀な起業家に共通する思考プロセス・行動様式のことで意思決定にまつわる理論を指す英語です。インド人経営学者サラス・サラスバシーが、『エフェクチュエーション: 市場創造の実効理論』という本の中で提唱しました。これまで一般化するのが難しいとされた起業家の思考を体系化し、誰でも学習できるようにしました。現代は、変化が激しくさまざまな事象に関して予測が難しいVUCA時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれます。その中で未来を予測可能とし、ひとつの方法論になり得るものとして「エフェクチュエーション」は注目を浴びています。日本ではようやく2021年にエフェクチュエーション協会が設立され、さまざまな事例研究や普及が行われはじめています。

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エフェクチュエーションにおける5つの行動原則

「エフェクチュエーション」には5つの行動原則があります。これらは優秀な起業家たちが不確定な状況を打開する手段として共通するものです。では、一つずつ具体的に見ていきましょう。

「手中の鳥」の原則

優秀な起業家は何かを生み出すとき新しい手段や方法を使っていると思われがちですが、実際は既存の手段や方法を使っています。新しい方法を発見し利用するのは非常に大変なことですが、社内の手持ちカード(能力・専門性、人脈など)を把握していれば、無理せず既存の方法を利用できます。サラスは「Who I am(自分は何者か:アイデンティティ、能力)」「What I know(自分は何を知っているか:教育、経験から得た知識)」「Whom I know(自分は誰を知っているか:人脈、社会的ネットワーク)」の3つの方法で手持ちカードを見定め、それらを利用するところから始まるのだ、と提唱しました。これを「手中の鳥」の原則といいます。

「許容可能な損失」 の原則

優秀な起業家は、予測できる利益をもとに投資(期待利益の最大化)するのではなく、どのレベルの損失まで許容可能か(損失の最小化)に基づいて新規事業をスタートします。つまり、予測が難しい現代だからこそ、引き返せる範囲を事前に決めておき、未来への投資を行います。従来は、不確実性の高い新規事業にチャレンジし成功している起業家は、ハイリスク・ハイリターンの繰り返しで利益を得ているという見方が一般的でした。しかし、サラスの研究によって明らかになったのは、優秀な起業家こそリスクを回避する傾向にあったのです。これを「許容可能な損失」 の原則といいます。

「クレイジーキルト」の原則

「クレイジーキルト」とは、大きさや柄の違う布をうまく縫い合わせて作られたキルトのことを表しています。この縫い合わせられたクレイジーキルトのように、顧客・消費者やパートナー(競合他社)、そして社員など、起業家自身を取り巻くそれぞれのステークホルダーと関係性を保ち、一緒に目標に向かって進むことを「クレイジーキルト」の原則といいます。

前述した関係者の中に競合他社が含まれているのが最大の特徴です。予測不能な時代において競合と対立するのではなく、パートナーとして良質な関係を保ち共に協力することで、新事業の拡大につながるとしています。

「レモネード」 の原則

アメリカのことわざにある「人生がレモンを与えたときには、レモネードを作りなさい」を基にした原則です。ここでいうレモンとは、欠陥品や失敗作を意味します。つまり、レモンに手間をかけてレモネードを作るのと同様に、欠陥品や失敗作が生まれても工夫やアイデア次第で価値あるもの(おいしいレモネード)に生まれ変わらせるのが可能であるという意味です。

日系企業や日本政府の考え方として、「チャレンジして失敗するくらいなら何もしない方がいい」といった傾向が見られます。これでは何も生まれません。欠陥品や失敗作は、新しい価値を生むための材料です。したがって、「エフェクチュエーション」では、失敗をいかにチャンスと捉え、成功につなげていくかを重視しています。

「飛行機の中のパイロット」 の原則

飛行中のパイロットは、常に画面に映る数値(風向きや高度など)を確認しながら、刻々と変化し続ける状況に応じて臨機応変に対応します。ビジネスの世界においても、経営者や起業家は予測不能な事態に対して迅速に対応する必要があります。この状況をなぞらえて、予測不能な状況にも臨機応変に対応することを「飛行機の中のパイロット」 の原則といいます。つまり、優秀な起業家は根拠のある予測だけに頼らず、常に状況を監視してコントロールを怠らない視点が求められます。またこれは、実践者自らの戦略によって将来を変えられるという価値観でもあります。

コーゼーションとの違い 

エフェクチュエーションと同時に言及されることが多い意思決定プロセスに、「コーゼーション」があります。エフェクチュエーションは手段を重視するのに対し、コーゼーションは目的を軸としています。最上位にある目標を最初に設定し、その目標を達成するために、逆算して戦略を決め実践していきます。つまり、未来(目標)は予測できるという前提で成り立っており、これまでの主流な理論でした。

一方で、エフェクチュエーションは、不確実な未来においては、最終目標を定めず予測可能な側面を重視していく傾向があり、その点で大きな違いがあります。これらをまとめて、サラス・サラスバシーはコーゼーションを「目的ありき」、エフェクチュエーションは「手段ありき」の意思決定プロセスと定義づけしています。

エフェクチュエーションとコーゼーションを併用することが必要

サラス・サラスバシーの研究によれば、優秀な起業家の89%がエフェクチュエーション理論を実践していた一方で、経験の浅い起業家の81%がコーゼーション的なアプローチを選択したとしています。しかし、この数値を見て勘違いしてはいけないのが、2つの理論に優劣があるわけではなく、状況に合わせて両者を併用するのが必要ということです。なぜなら、エフェクチュエーションは予測不可能、目標が不明瞭、環境変動がある事態において有効ですが、ある程度事業が安定して未来を予想しやすい状況であれば、コーゼーションが有効だからです。

つまり、社会的に変化が激しい現代においても、どの程度の結果や確率分布が予想されるのかによって、両者を使い分けることが重要です。例えば、起業などのように0→1のフェーズではエフェクチュエーション、事業拡大など1→10のフェーズではコーゼーションが効果的とされています。

まとめ

変化が激しくさまざまな事象に関して予測が難しいVUCA時代においては、「コーゼーション」と「エフェクチュエーション」をうまく併用し、状況にあった意思決定プロセスを選択するのが重要です。しかし、理論的な部分は理解できていても、実践しようとすると「従来の方法をどのように変化させればいいのかわからない」という起業家・経営者も多いでしょう。そういった場合は、起業やマーケティング戦略の組み立てに向けた業務効率化ツール「Asana」の導入をおすすめします。「Asana」は全世界で導入実績があり、専用のツールは高い評価を得ています。事業戦略の立て方に関する相談や起業時のサポートにも対応しています。ご興味ある方はぜひお問い合わせください。

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