ビジネスにおいて、何よりも重要視されるのが「結果」です。しかし「結果」とは「過程」を経ることで到達するものです。従って企業経営において最大の結果を得るためには、過程の最適化が不可欠と言えるでしょう。本記事では業務プロセスを能動的に管理するマネージメント手法「プロセス管理」について詳しく解説します。
プロセス管理|意味と目的について
プロセス管理とは、文字通り業務における一連の流れを管理するマネージメント手法です。「Business Process Management(ビジネスプロセスマネージメント)」の頭文字をとって「BPM」とも呼ばれます。「結果」はビジネスにおいて何よりも重視されますが、過程を経ずして結果は出ません。望む結果に至るためには、そこに至るための然るべきプロセスが存在します。従って、結果を最大化するためには、プロセスの最適化が必要不可欠と言えます。
経営における「結果」とは、企業によってその定義は異なるかもしれません。企業の発展に必要な条件のひとつが、「利益の最大化」です。しかし、利潤の追求だけが企業経営の目的ではありません。
経営の根源的な目的とは、「優れた製品やサービスの創造を通じて顧客の潜在需要を満たし、社会に貢献すること」とも言えるでしょう。また、企業に利益をもたらす人物とは、経営者でもなく従業員でもなく、顧客です。従って、企業経営の目的とは「顧客の創造」と言っても過言ではありません。
経営学者のピーター・F・ドラッカーも「事業の目的とは顧客の創造である」という言葉を残しています。顧客の創造という「結果」に到達するためには、社会的価値の追求、経営課題の分析、業務効率の改善、労働生産性の最大化、的確な需要予測など、さまざまなプロセスが必要です。つまりプロセス管理とは、企業が社会的価値を提供し顧客創造へと至るために、あらゆる業務を最適化するマネージメント手法と言えるのです。
プロセス管理|メリット
プロセス管理によって得られるメリットは、「経営課題の早期発見」と「労働生産性の最大化」です。
プロセス管理は、望む結果から逆算することでプロセスを細分化し、業務効率の改善に取り組みます。業務プロセスを細分化して捉えることで、業務の全体像を俯瞰的な視点から把握できるため、さまざまな経営課題の可視化につながります。
いかなる事業であっても問題が発生しない企業はありません。大切なのは問題を発生させないことではなく、発生した問題に柔軟に対応できる仕組みの構築なのです。
経営課題を解決へと導くためには、順序立てて論理的に段階を踏んでいくことが重要です。「問題発見」→「分析」→「解決策の立案」→「実行」というステップを踏破していくことで、ロジカルに問題解決に至れます。
こうしてプロセス管理を行うと、経営課題が可視化され、定量的な分析に基づいた事業戦略の立案につながります。そして経営課題を解決することで業務効率の改善につながり、組織全体の労働生産性の向上も実現できるでしょう。
プロセス管理|具体的な方法
プロセス管理は主に5つのフェーズから構成されています。「立ち上げ」「計画」「実行」「コントロール/結果の抽出」「終結」の5つです。プロジェクトを5つのフェーズに細分化し、全体像を俯瞰することで業務プロセスの課題発見と改善に寄与します。ここからはプロセス管理における5つのフェーズについて見ていきましょう。
プロジェクトの立ち上げ
プロジェクトの立ち上げにおいて最も重要となるのが目的の明確化です。プロセス管理はゴールから逆算し、プロセスを細分化することで業務効率を改善します。つまり最も大切なのはゴールを明確にすることです。辿り着く目的地が明確になっているからこそ、そこに至る最適なルートを選択できます。「なぜプロジェクトを立ち上げたのか?」というビジョンを共有することで、チームメンバーのモチベーション向上にもつながるでしょう。
プロセスの計画
プロジェクトの目的地を定めたなら、次は目的地へと辿り着くために必要な計画の立案です。プロジェクトにおける予算やリソースの配分、品質マネージメントやスケジュールなどを具体的な数字に落とし込みます。プロジェクトが理想とする状態へ到達するために何が必要なのか、あらゆる可能性を考慮しながら徹底的に思案します。
また、すべてが計画通りに進む可能性は低いため、万が一の事態に備えた予備案も必要です。どんなプロジェクトにおいても、予想だにしなかった問題が発生する恐れは常に考えられます。完璧な計画を立てるよりも、フレキシブルに対応できる計画を立案して、実行に移しましょう。
プロセスを実行
計画は実行してはじめて価値を生みます。どれだけ優れた計画であっても実行しなければ机上の空論に過ぎません。立案した計画によってゴールへと至る道筋が見えたら、次はアクションに移りましょう。
このフェーズで大切なことは、チーム全体のコミュニケーションです。プロジェクトの完遂は1人で成せるものではありません。チームメンバー全員が積極的な情報共有を行い、全体意識を持ってプロジェクトに臨んでもらえるよう、管理者側は常に気を配りましょう
プロセスのコントロール/結果の抽出
計画に沿ってプロジェクトを実行に移したら、全体の業務プロセスをモニタリングして結果を抽出します。計画と結果を比較しながら、どのような成果を得られたのかを定量的に評価しましょう。十分な結果が得られた場合は、情報やノウハウを体系化して組織全体で共有します。満足な結果が得られなかったのなら、原因の調査と分析が必要です。成果がどうであれ、結果からフィードバックを得て継続的な改善に取り組むことが重要と言えます。
プロジェクトの終結
最後はプロジェクトの業務プロセスを終結させるフェーズです。立案した計画に対してどのような問題が発生し、どう対処したのかなど全体を振り返ることで、次なるプロジェクト成功の糧とします。
大切なのは結果をしっかり受け止め、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを回し続けることです。プロジェクトの終結は、事業全体を見ていくうえでもとても重要なフレームワークと言えるでしょう。
ビジネスプロジェクトマネージメント(BPM)ツールの活用
近年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目を集めています。DXとは最先端テクノロジーを活用し、組織全体の在り方を改革していく取り組みです。DXを実現するためはITソリューションの導入が欠かせません。ITソリューションの導入はプロセス管理の効率的な運用に寄与するでしょう。プロセス管理に特化したシステムを「ビジネスプロジェクトマネージメント(BPM)ツール」と呼びます。
BPMツールは主に3つの機能を備えています。
1つ目は業務プロセスを可視化して再設計する「モデリング機能」です。業務プロセス上の課題を洗い出し、改善策を立案します。2つ目は「シミュレーション機能」です。モデリングによって再設計された業務プロセスの実行時に、どのような結果に至るかをシュミレーションします。3つ目は業務プロセスの実行状況を監視する「モニタリング機能」です。再設計した業務プロセス実行後に得られた結果をフィードバックします。
これら3つの機能を主軸として業務プロセスを最適化へと導くことが、BPMツールの役割です。
プロセス管理|注意すべきポイント
プロセス管理はあらゆる産業において応用可能なマネージメント手法です。例えばシステム構築やアプリケーション開発などに携わるIT業界はもちろん、映像制作やデザインを担うクリエイティブ業界、医薬品の研究開発に従事する製薬業界まで、幅広い分野で導入されています。
さまざまな分野に応用可能なプロセス管理ですが、導入にあたって注意すべきポイントがあります。それは「自社の経営戦略に沿ったマネージメント手法を取り入れる」ということです。
どのような企業にも一定の業務プロセスの流れがあります。他企業のプロセス管理をそのまま模倣するだけでは高い成果を得ることはできません。
業界や業種によってさまざまな業務プロセスがあり、それぞれに適したマネージメント手法が存在します。この世にひとつとして同じ企業はなく、各企業によって理念やビジョンもそれぞれ異なるでしょう。したがって、各々の企業理念やコアコンピタンスなどをよく考慮し、自社の経営戦略に適応するマネージメント手法を取り入れることが重要なのです。
まとめ
ピーター・F・ドラッカーが言ったように、企業経営の目的は顧客の創造です。そして顧客創造という結果を得るためには、「顧客は何を求めているのか」を特定する過程を最適化しなくてはなりません。そのために必要となるのがプロセス管理です。どのような出来事においても過程を経ずして結果は出ないものです。業務プロセスの最適化は、顧客創造という企業の存在意義へとつながるでしょう。
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