目標管理にはさまざまな手法がありますが、近年注目されている手法のひとつがOKRです。世界的に有名な企業も取り入れ始めたことで「自社にも導入したいので詳細を知りたい」という企業担当者も多いのではないでしょうか。本コラムでは、そもそもOKRとは何なのか、その導入効果やポイントを交えながら、OKR導入の手順を解説します。
OKRとは
OKRとは、目標管理手法のひとつです。OKRは「Objectives and Key Results」の略称で、日本語では「目標と主要な結果」と訳されます。
OKRの特徴は、高い目標と目標達成度を指標にして、企業・チーム・個人が、同じ方向や目的に向かって進めるようになることです。OKRのアルファベットを分解すると、目標(O)で定めるものは定性的(数値で表せないもの)、主要な結果(KR)で定めるものは定量的(数値で表せる)となります。
極端な例を出すならば、目標に「見込み客を増やす」という項目を設定し、主要な結果には「1日100件のアポイントを取る」などが考えられるでしょう。
そして、OKRで注目すべき指標は、「主要な結果」を達成できたかということです。OKRでは、「達成可能なノルマ」を主要な結果に定めるのではなく、「達成可能な結果よりも上の目標」を定めます。
つまり、100%達成できるものではなく、達成度が60%~70%となるくらいの目標を設定するということです。
背伸びしなければ達成できない目標を定めることで、「最大限の努力」と「持ち得るすべての能力」を引き出せます。そして、従業員一人ひとりが「背伸びしなければ達成できない目標に」チャレンジすることで、個人のスキルアップはもちろん、チームや企業全体の力を高めていけるのです。
OKRに類似する用語
OKRは目標管理手法のひとつですが、目標管理にはOKRに類似する用語も多数あります。ここでは、OKRに類似する用語を確認していきましょう。
KPI
KPI(Key Performance Indicator)は、日本語で「重要業務評価指標」と訳され、目標達成までの中間目標指標として用いられる目標管理手法です。
KPIを設定すれば、目標を達成するために「何が必要で」「何をすべきか」が明確になるため、進捗管理も容易になります。
また、目標達成率なども明確に数値化できるため、人事評価の指標のひとつとしても利用できる目標管理手法です。
KPIについては、【KPIとKGIの違いとは?具体例や設定方法からそのポイントについても解説】にて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
MBO
MBO(Management by Objectives)は、目標達成のための目標管理手法です。MBOの導入目的は「組織の目標達成」「個人の目標達成」で、「人事考課」にも利用されます。
OKRは「目標達成率60%~70%を目指す」のに対し、MBOは「達成率100%を目指す」という違いがあります。
MBOについては、【MBOとは?目標管理制度の導入目的やメリット・デメリットをわかりやすく解説】にて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
OKRを導入する効果
それでは、OKRを導入する効果をみていきましょう。
企業に何を求められているのかがわかりやすい
OKRは、企業が定める目標と、それに紐づく従業員の目標によって成立する目標管理手法です。
OKRで従業員が定める目標は、従業員の一人ひとりが自分のスキルや経験に合わせた目標を決めるのではなく、「企業の目標達成のために定める目標」であるため、「企業に何を求められているのかを理解」していなければなりません。
つまり、従業員が設定する目標は「企業が従業員に求める目標」であるため、従業員一人ひとりが「企業に何を求められているのかがわかりやすい」ということなのです。
主体的な行動につながる
OKRでの目標設定は、最大限の努力をしなければ達成できないものを設定します。
つまり、目標達成には新たなスキルの習得や、業務を遂行するための創意工夫が必要だということです。
そのため、指示をされて動くのではなく、目的を達成するためにどうすればよいのかを考え、主体的に行動しなければなりません。
個人のモチベーション維持につながる
従業員一人ひとりの目標が企業やチームの目標と紐づいているので、「何を目指しているのか」が明確です。
そのため、自身の業務が企業へどのように貢献するのかがわかりやすいという特徴があります。何のために働いているのかがわからない状態で業務を行うよりも、「企業の期待に応えている」という意識で仕事をするほうがモチベーションを維持できます。
OKRを導入するポイント
それでは、企業がOKRを導入する際のポイントをみていきましょう。
目標(O)を設定するポイント
まずは、目標となる(O)を設定するポイントです。
定性的(数字で表せない)な目標設定でもよい
「O」に当てはまる最終目標に関しては、定性的な目標でもかまいません。ただし、「目標は何なのか」が客観的にわかるように表現しましょう。
例えば、自動車を所有していない人が、今後自動車を買うことを目標にする場合、「車を買う」ではなく、「〇〇の車を買う」と表現します。こうすることで、客観的にも「目標が達成されたか否か」が判断できます。
達成に努力が必要なものを設定する
設定する目標は、達成が困難なものを定めます。現状の延長上で達成できる目標ではなく、最大の努力をしなければ達成できないものです。
上述した「自動車の例」で表現するならば、「安い中古車を買う」のではなく、「高級な新車を買う」というイメージです。
企業全体の目標に紐づく目標を設定すること
OKRでは、まず企業としての目標を設定し、部署やチーム、従業員はそれに紐づく目標を設定します。
例えば、全体の目標が「1,000万円の車を買う」であるのに対し、個々の目標が「バイクの免許を取る」では整合性がとれません。ですので、この場合の個々の目的は「普通自動車免許を取る」でなければなりません。
成果指標(KR)を設定するポイント
次に、成果指標である「KR」の設定ポイントをみていきましょう。
定量的(数字で表せる)なもの
成果指標である「KR」については、定量的なものを設定します。つまり、数値化できる目標です。
上述した「自動車の例」ならば、「高級な新車を買う」ために必要な金額である「〇〇までに1,000万円を貯金する」「〇〇月〇〇日までに普通自動車免許を取得する」など、具体的な数値にまで落とし込みます。
ひとつの「O」に対して3つ以上の「KR」を設定
ひとつの「目標(O)」に対しては、3つ以上の「成果指標(KR)」を設定します。
例えば、「高級な新車を買う」という「O」に対しては、「1,000万円を貯金する」、「〇〇月〇〇日までに普通自動車免許を取得する」、「〇〇までに駐車場を契約する」など、目標を達成するために必要な成果指標を設定します。
できるだけ達成困難なもの
成果指標についても、できるだけ達成困難な指標を設定します。
例えば、「月に100万円ずつ貯金する」「普通自動車免許は1ヶ月で取得できるコースを選ぶ」など、現状維持では達成できないけれども、最大限の努力で60%~70%を達成可能なものが最適です。
OKR導入の手順
OKRを導入するには、大まかに5つのステップがあります。ここでは、OKR導入の手順をみていきましょう。
- 企業全体の目標設定
OKRでは、トップダウン的に一貫性のある目標を持たせる必要があります。ですので、まずは企業全体の目標を設定することが重要です。 - 企業全体の成果指標を設定
次に、企業全体の成果指標を設定します。目標を達成するために、企業として何をしなければならないのか、何を指標にすべきかを具体的に定めます。 - チームの目標と成果指標を設定
企業全体の目標と成果指標が設定できたら、部署やチームで目標と成果指標を設定します。このとき、企業全体の目標と紐づいたOKRを設定しなければなりません。 - 個人の目標と成果指標を設定
部署やチーム単位でのOKRを設定したら、そのOKRに紐づいた個人のOKRを設定します。 - フィードバック
各自のOKRを設定したら、定期的にミーティングを開き、OKRに対するフィードバックを行います。OKRを設定しても、見直す機会や方向性のレビューを怠ると、進むべき方向とずれてしまう可能性が出てくるためです。フィードバックは週一回や隔週に一回など、できるだけ短期間に設定して、目標の達成率や方向性を確認しながら進めていきましょう。
まとめ
OKRは、多くの有名企業でも導入されている目標管理手法のひとつです。企業・チーム・個人(従業員)の目標と成果が紐づくことで、企業全体の生産性や個人のモチベーション向上とスキルアップにも効果があります。OKRの導入ポイントや手順を把握して、自社への導入も検討してみましょう。
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