プロジェクトの推進にあたってはメンバー間の連携が重要ですが、それがうまくいっていないと悩むプロジェクトマネージャーも多いでしょう。プロジェクト成功のポイントの一つは「コミュニケーション」です。近年はコミュニケーション効率を高めるさまざまなチャットツールが普及しています。チャットツールの概要や、メリット・デメリットについて解説します。
チャットツールとは
PCやスマートフォンなどの通信機器を介して、リアルタイムでコミュニケーションを行うために、チャットツールが活用されています。形式が重視され、双方向性の低いメールと比較すると、実際に会話をするように、手軽なやり取りが可能です。プライベートで日常的なコミュニケーションをするために使うツールと、チャット以外にもさまざまな機能がついている企業向けのツールがあります。
プロジェクト管理に使えるチャットツールの例
ビジネスの場面で、プロジェクトを管理するうえで必要なコミュニケーションを円滑にするチャットツールをご紹介します。
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Chatwork
Chatworkは、国内外で利用されている企業向けのチャットツールです。使いやすいユーザーインターフェースが特徴で、スマートフォンでも支障なく使えます。タスクの登録や管理を行う機能があります。また、社外のアカウンも招待できるので、グループを分けながら運用すれば便利に活用できるでしょう。無料のトライアル期間があるので、試してみるのもおすすめです。
Slack
Slackも国内外を問わず普及している、企業向けのチャットツールです。通話時に画面を共有する機能や、ワークスペースを分けて外部と連携する機能があるので、顧客とのコミュニケーションにも活用されています。こちらもパソコン、スマホなど端末を問わず、使いやすいデザインで、企業に限らず大学のゼミなどでも幅広く使われています。なお、Slackにも無料お試し期間があります。
プロジェクト管理でチャットツールを利用するメリット
社内外を問わず、さまざまな関係者が携わるプロジェクトの管理において、チャットツールの活用は効果的です。そのメリットについて解説します。
遠隔でもコミュニケーションが取れる
インターネット環境さえあれば、遠隔でもスムーズなコミュニケーションが可能になります。もちろん、メールや電話でも遠隔での連絡はできますが、チャットツールを利用することで、リアルタイムで、双方向性のあるコミュニケーションが可能になります。これにより、政府が掲げる働き方改革の文脈のなか、働く場所や時間の選択肢が増えます。特に、新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、リモートワークの導入が急速に進むなか、チャットツールはコミュニケーションツールとして重宝されています。
会議を簡単におこなえる
チャットツールを使ってのやり取りは、単にチャット形式でコミュニケーションを取るというだけでなく、従来の会議に代用することも可能です。対面での打ち合わせでは、参加者が一つの場所に集まるため、時間・場所の制約が負担となることもありました。しかし、チャットツールを使用すれば、オンラインでも十分に打ち合わせができるので、打ち合わせの数がむしろ増えているという事例もあります。また、ツールによっては、ビデオ会議や画面を共有しながらの打ち合わせができます。工夫次第で、対面での打ち合わせと比較しても生産性を下げることもありません。顧客との商談についても、チャットのビデオ機能で行うことができれば、1日あたりの面談数を増やすことも可能になるでしょう。
情報を共有しやすい
情報共有がしやすい点も、チャットツールのメリットです。一度グループを作成すれば、あとは必要な内容だけを入力すればグループ内での情報の共有ができます。そのため、メールのように、送信対象となるメンバーのアドレスをその都度入力する手間は不要です。さらには、ファイルを共有する機能もあるため、グループ内で重要な資料などを必要に応じて保存・管理できます。
またメールでは、あいさつ文や冒頭の定型文が含まれるため要点がぼやけやすい、履歴を追いづらいという面があります。複数人でやり取りをしていればなおさら、欲しいメールを探すのに手間がかかってしまいます。その点、チャットではやり取りが1か所でなされ、用件だけの端的なコミュニケーションが多いため、履歴を確認しやすくなります。ツールによっては、重要なメッセージを保存できる機能もついており、情報が流れてしまわないように対策できます。
タスクが管理しやすい
タスクを管理する機能がついたチャットツールもあります。チャット上でのコミュニケーションの中で、必要なタスクなどが発生した場合、それをそのままタスクとして登録・管理が可能です。また、自身の進捗状況だけでなく、チーム全体や他メンバーの進捗もチャットツール内で可視化できるというツールもあります。コミュニケーションとタスク管理がより密接につながることで、効率よくタスク管理が行えるでしょう。
プロジェクト管理でチャットツールを利用するデメリット
チャットツールを導入するだけで、プロジェクト管理が自動的に効率化されるわけではありません。適切に運用しないと、むしろ逆効果になることもあります。最後に、プロジェクト管理でチャットツールを利用するデメリットを解説します。自社の場合に置き換えながら、どんな注意点があるのか検討してみてください。
連絡の増加で生産性が低下する可能性がある
チャットツールは、電話やメールなどと比較して、より気軽にコミュニケーションを図れるため、連絡が来る頻度が高くなる可能性があります。メールであれば、チェックする時間帯を決めておくなど工夫することができますが、チャットの通知が絶え間なく来ると、それに一つ一つ対応してしまうこともあるでしょう。そうなると、取り掛かっている仕事への集中が途切れ、結果的に生産性が落ちてしまうというリスクもあります。
チャットにおけるコミュニケーションにおいて、一定のルールを設けることも必要でしょう。たとえば、リアルタイムで確認が必要な人にのみ通知(メンション)を入れてメッセージを送るなど、チームとしても取り決めを作ることをおすすめします。
プロジェクトに関係のないコミュニケーションが発生する可能性がある
あいさつ文など形式的な部分の多いメールと比較して、チャットは端的なメッセージを送りやすく、気軽にコミュニケーションを取ることができます。しかし、コミュニケーション量が増えるメリットがある反面、プロジェクトや仕事とは直接関係のないプライベートなやり取りがチャット内でなされるというケースも出てきます。あくまでプロジェクト遂行のために円滑なコミュニケーションをすることを目的としたツールです。その点をチームに周知し、プライベートなやり取りは別のツールで行うようにしましょう。
情報の見逃しが起こる可能性がある
チャットでのコミュニケーションは、気軽に行えるため、メールよりもメッセージの量が確実に増えます。次々と入ってくるメッセージのなかで、重要な共有事項などの情報が、他のメッセージに紛れて流れていってしまいがちです。やり取りが1か所にまとまっているので、スクロールすれば履歴を遡ることはできますが、確認したい重要なメッセージがどれだったかを特定するのは、簡単には行かないことがあります。
そのため、同じプロジェクトであっても、コミュニケーションの目的などに応じてチャットのスレッドを適切に分けることも必要でしょう。あるいは、メッセージの保存機能を活用し、重要なメッセージやタスクに直結するメッセージは一旦保存し、完了したら保存を外すなどの工夫もおすすめです。後から検索しやすいようにキーワードとなる言葉を入れておくような工夫も効果的です。
ツールの利用に慣れるのに時間がかかる可能性がある
チャットに限りませんが、何らかのツールを新しく導入する際、従業員がそのツールに慣れるまでに時間がかかることも考えられます。若手のメンバーはデジタルツールに慣れているが、上司など立場が上の人の方が慣れていないというケースも多いでしょう。セキュリティも含めたツールの正しい運用法がメンバーに浸透するまでは、ある程度時間がかかりますので、その前提でツールの導入を検討した方がよいでしょう。特に、最近は新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、十分な準備がないままテレワークに移行せざるを得ないという企業も増えており、遠隔のチャット上でチャットの使い方についてレクチャーするという状況も起こっているのではないでしょうか。メンバー全員が適切に使いこなせるようになるまでの、時間とコストもある程度念頭に入れておかなくてはなりません。
また、慣れという意味では、既存のツールとの棲み分けを明確にすることも重要です。顧客とのコミュニケーションなど、全てをチャットツールに置き換えるのは難しい部分もあります。メールや予定表、プロジェクト管理ツールなど、すでに運用しているツールと新たに導入するチャットツールについて、運用ルールを明確にし、きちんと棲み分けをしましょう。そうすることで、コミュニケーションを行う際にどのツールを使うべきか迷う必要がなくなり、本題に集中できるので、仕事の生産性も上がるでしょう。
まとめ
社内外を問わず、さまざまな人が関わるプロジェクトの推進には、メンバー間で密に連携を取ることがポイントです。近年では、従来の電話やメールに加え、チャットツールの導入が広がっています。目的に応じて複数人のグループで気軽にコミュニケーションが取れ、情報共有もしやすい反面、業務の生産性が低下する可能性もあります。チャットツールを導入する際は、事前に注意点やデメリットも確認し、より効果的に活用しましょう。
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