社会問題をテクノロジーで解決する「クロステック」が急速に動き始めているなか、女性ならではの健康課題に取り組む「フェムテック(Femtech)」への注目が高まっています。 今回ご紹介するインテグロ株式会社は、この分野において日本の先駆けとも言える企業で、月経カップや吸収型サニタリーショーツなどの輸入販売事業を行っています。
今でこそ、日本のフェムテック市場にも多くのプレイヤーが参入し、盛り上がりを見せていますが、同社は日本でまだフェムテックという言葉が知られていなかった2018年から、この新しい市場を開拓し、牽引してきました。これほど急激に変化する市場の中で、どのようにビジネスを加速させているのでしょうか、経営戦略の策定から実行までのプロセスはもちろん、輸入・販売から品質や顧客の管理まで、バリューチェーン全体を通してあらゆる業務をAsanaで一元管理しているという同社に、詳しく話を伺いました。
■企業情報 インテグロ株式会社 |
■導入効果
|
増え続ける情報やファイルをスマートに解決
インテグロは「女性の健康課題を解決する商品やサービスを提供し、誰もが自分らしく活躍できる社会をつくる」をミッションに掲げている企業です。代表取締役の神林美帆さん、マーケティングスペシャリスト 岡田奈々さん、ECオペレーター&カスタマーサポート 木下綾乃さん、そしてバーチャルチームでは常に20名ほどのメンバーを擁しています。ほとんどのチームメンバーは女性で、それぞれが強みを活かしながら、柔軟で効率的な働き方を実現しています。
この数年で、フェムテック市場は大きな動きを見せており、多くの企業がフェムテックの分野へ参入し、政府も女性の課題解決に着手するなど、各方面から注目も集まっています。同社も市場で成長するにつれて、社内外を問わずチームメンバーや関係者が増え、各自の業務もクロスファンクションに広がりを見せています。 マーケティングを担当する岡田さんは、こうした変化の中でも、Asanaを活用していることで、確認や調整に無駄な時間を取られることは少ないと言います。
「業務を進める上では、多くの関係者がいます。以前の職場ではメールでのやり取りで、どの会話をいつしたのかわからなくなることもありました。また、進捗管理ファイルを更新するたびに新しいバージョンが増えて最新情報が分からなくなることもありました。」(岡田さん)
現在では、プロジェクト開始の際に、社内外問わずなるべく全てのメンバーをAsanaに招待するようにしています。仕事に必要な情報やコミュニケーションをAsanaへ集約することで、最新情報や進捗がリアルタイムにわかるため、最新ファイルを探したり、ファイルを開いて進捗を記録、確認するといった時間が大幅に削減できています。
また、先日公開された自社ECサイトのリニューアルプロジェクトもAsanaを中心に進められました。より良い顧客体験を提供し、お客様と長期的な関係性を築くための重要なプロジェクトで、社外スタッフともスムーズで正確なやり取りが求められました。そのプロジェクトでは、オンラインホワイトボードの「Miro」とAsanaを組み合わせています。
外部のデザイナーがサイトマップやデザインを「Miro」で作り上げ、進捗管理や制作物へのフィードバックにAsanaを使用したのです。Asanaの校正機能は、PDFや画像ファイルなどのデザイン案に直接コメントでき、それらが自動的にタスク化されるため、正確でスマートなワークフローを構築できました。
さまざまなデジタルツールの使用経験を持つ岡田さんは、とりわけAsanaの誰にでも使いこなせる点を高く評価しています。「他のツールには、UIが悪くて使いづらく、保存時にタイムラグがあるものもありストレスでした。AsanaのUIは直感的に分かりやすく、いつでもサクサク動きます。情報を自動保存してくれる機能もありがたいです。かゆいところに手が届くのがAsanaだなと感じています」(岡田さん)
仕入れ発注からお客様に届くまでの全工程を一元管理
QMSによるコンプライアンスも実践
インテグロは発注からカスタマーサポートに至るフルフィルメントもAsanaで一元管理しています。自社ECサイトに加えて、楽天やAmazonといったオムニチャネルでの販売を展開しているため、発注、在庫データに受注の管理、販売や顧客とのやりとりとに、常に正確なオペレーションが欠かせません。
受発注管理を行う木下さんは、輸入元への仕入れ発注から、商品が日本に到着して、倉庫でラベル貼付や検品を行い、商品が出荷できる状態になるまでの工程に必要な業務をひとつのプロジェクトにまとめて管理しています。Asanaにまとめることで、自分の作業が抜け漏れなく行えると木下さんは言います。
業務の流れはおおよそ同じ仕事が繰り返されるため、毎回テンプレートをプロジェクト化しています。1回の輸入にかかる、書類の準備、輸送状況の確認、倉庫への諸連絡、検品作業など約40~50のタスクがありますが、依存関係にあるタスクも整理しやすいAsanaがこれらの業務に適しています。こうした大規模な発注と輸入のプロセスは需要に応じて定期的に発生するため、テンプレートをコピーして、計画された日数を設定することで、煩雑なタスクも簡略化できます。
また、在庫管理は「在庫管理」というプロジェクトを作り、毎日倉庫からメールに添付されて送られてくる在庫表をAsanaに保存しています。過去の在庫数もすぐに把握でき、企業の棚卸し在庫の定期的な締めや資産管理にも役立っています。
インテグロで取り扱っている月経カップは一般医療機器にあたるため、厳密な品質管理が必須です。例えば、市場に出荷した製品の個数やロット、返品数、ユーザーの声などのトランザクションの履歴を、規定の用紙に記入・印刷して保存しなくてはなりません。年に一度行われる監査のあとは、そこで受けたアドバイスや、次回までに改善できる点、ドキュメント管理のポイントなど、やるべき項目をすべてタスク化し、ひとつのプロジェクトにまとめています。これらのタスクは、次回の監査までにすべて「完了」することで、他のツールでは構築しにくいQMS(品質管理システム)としてAsanaを活用しています。
「以前使っていたツールでは、規定の用紙フォーマットを保存していただけで、管理していたとはいえません。本来ならば、QMSの情報は管理するだけではなく、有効な情報としてメンバーにシェアしたり、それを元に改善プランへ落とし込むことが大切です。Asanaを使い始めて、これまで単なる管理情報だったものが、価値ある情報に変わっていき、はじめて『QMSを管理・運用・改善できている』と実感できました。」と木下さんは話します。
長期にわたるカスタマーサポートの履歴を活用
お客様からの問い合わせはメールに加え、Amazonや楽天のシステムに届くこともあります。そこで、木下さんはそれらすべてをAsanaに集約しています。「月経カップ」は、伝えたアドバイスをユーザーが試す機会が次回の生理、つまり約一か月後になることもあります。商品の特性上、使い方に慣れるまで3ヶ月程度かかることもあり、サポートのサイクルを月単位で捉える必要があります。
「メールのように時系列だと問い合わせが埋もれてしまいますが、Asanaでは自分が対応すべき人、返事待ちの人、対応が終わった人などに分けて管理できます。まだ返信が来そうな人は“返事待ち”、今アドバイスに沿って実践中だろうと予想できる人は“経過観察”というセクションを作って振り分けています。Asanaのおかげで対応漏れがなくなりました。」(木下さん)
問い合わせがあった顧客の名前や連絡先をまとめて“お客様管理”というプロジェクトを作り、“お問い合わせ対応”のプロジェクトと紐づけています。「お問い合わせ対応のプロジェクトでは、「サイズ選び」、「漏れる」「お手入れ方法」などシンプルで分かりやすいタイトルを付けてカテゴリー別に管理しています。そして未対応、対応完了などのステータスも併せて登録します。」(木下さん)
例えば、同じ「漏れる」という悩みでも、詳しい話を聞くと悩んでいる内容が少しずつ異なることがあります。このとき、Asana上に記録した過去のやり取りを参考に、解決方法を考えてアドバイスしたり今後の対応方法を検討したりしています。長期化しそうな場合や、話しているうちに悩みの内容が変わる場合は、改めて新しいタスクを作ります。
木下さんは、全てのお問い合わせをライブラリーに蓄積しています。それは今後、担当者が増えた際の教育ツールにすることを想定しているからです。Asanaによって情報が属人化せず、企業の知的財産として活用できています。
ミッションとゴール、ゴールとタスクの紐づきがもたらす意識変化
会社の経営戦略をメンバー全員と共有するためにも、Asanaは役立っています。神林さんは「弊社はミッションドリブンの会社」と語り、どんな小さなタスクにもその先には必ずミッションが紐づいていると考えています。
そのことを常に意識できるようにと、神林さんがよく利用しているのは、Asanaのゴール機能。自身も含めた全社員のプロジェクトやタスクはゴールに設定したミッションに紐づけ、そのタスクの目的をきちんと意識した上で行動できるようにしています。
「例えば、仕事中に、スタッフの誕生日プレゼントを買ってきてと頼まれたとき、ゴールを意識していなければただの雑用で終わってしまいます。でも、プレゼントを用意するのはチームビルディングのため、とミッションに紐づいたゴールがあれば、重要なタスクだと意識することができます。」(神林さん)
Asanaのゴールには、セールス部門、人事部門、ECバックエンド、マーケティングなど、部門ごとに1年間の目標を設定し、ゴールにはさらに細かくサブゴールを設定したうえで、プロジェクトやタスクに結び付けています。作業からミッションをきちんと意識できるように設定すれば、リアルタイムにゴールまでの進捗状況を把握できます。
パーパス経営を目指しているという同社のミッションである「女性の健康課題を解決する商品やサービスを提供して、誰もが自分らしく活躍できる社会を作る」ということを達成するために、Asanaの機能を使いながら日々のこまかな業務でも、目的意識を持つことを心がけています。
仕事を「シェア」し合えば新しい価値も創造できる
神林さんはこれまでを振り返り「Asanaのおかけでコロナ禍のリモートワークや、女性が活躍できる働き方の推進にも対応できている」と語ります。
インテグロはコロナ禍前から、Asanaを導入していました。そのためリモートワークへの移行で課題を抱える企業が多い中でも、インテグロのスタッフはどこにいてもそれまでと同様に、高いパフォーマンスを発揮できました。
また先日、スタッフが妊娠したときにも、Asanaをうまく活用しながら体調に合わせて柔軟に在宅ワークを行いながら、変わりなく業務を進めることができたと言います。女性は妊娠、出産、育児などのライフサイクルのなかで、休業や時短などの勤務を選択せざるを得ないこともありますが、神林さんは、女性が長く働ける環境の実現には、仕事を「シェア」して協力し合える体制づくりを進めることが解決策だと考えています。
そのために、情報や知識を日々蓄積することができ、コラボレーター機能で1つの仕事をメンバーと協業できるAsanaは欠かせません。リモート環境の有無にかかわらず、仕事を分かち合えることで、自然とチームワークも高まっています。
女性のチームとして、メンバーの強みを活かして働きやすい環境を整えるためには、誰にでも使いやすいツールの導入が重要だと神林さんは言います。「ITを最大限に活用することで、効率的に仕事を進めたいと考えています。そのツールのひとつが、Asanaです。仕事をシェアして柔軟に働ける環境は、きっと男性にも働きやすいはずです。」(神林さん)
最後に、神林さんに今後の展望を伺いました。
「どのライフステージにいる女性も生き生きと活躍できる社会を目指したいと考えています。例えば女性が抱える問題のひとつに更年期の悩みがあります。これまでタブー視されてきましたが、女性の本来のパフォーマンスを下げてしまうことは明らかです。こうしたさまざまな課題を解決して、今後より女性が社会で活躍できるような社会づくりに貢献できればと思っています」(神林さん)
急速に進化しているフェムテック領域のリーディングカンパニーとして、時代にスピーディに適応し、新しい分野を切り拓くため、今後もAsanaをフル活用した更なる展開が期待されます。
- カテゴリ:
- Asanaのヒント
- キーワード:
- 事例