近年、「イベントマーケティング」というマーケティング手法が注目を集めています。しかし、イベント運営はノウハウがないと、どこから手を付けていいのかもわからず、本番当日に手痛い失敗をしてしまうことも起こりえます。そのため、本記事では、企業のマーケティングイベント企画を運営する上での作業内容と、そのポイントを解説します。
イベントやセミナーを活用したマーケティングとは
近年、イベントやセミナーを活用したマーケティング方法、「イベントマーケティング」が注目を集めています。イベントマーケティングとは、企業がセミナーや展示会、交流会などのイベントを自ら主催してそこで自社のPRを行い、多くの消費者との接点を構築することを目的としたマーケティング戦略を意味します。
オンライン全盛の今日、WebサイトやSNSなどを活用したマーケティングに注力している企業は多くありますが、オンライン広告は必ずしも万能ではありません。「百聞は一見に如かず」と言いますが、ディスプレイ上で商品説明を読むよりも、実際に見て触って、使ってみたほうが遥かに商品の魅力を理解できるというのはよくあることです。
イベントマーケティングは、こうしたオフラインならではのリアルな感覚やその魅力に再着目し、「実際に顧客に商品の使用感を体験してもらいながら、対面で直接魅力を伝えること」を主眼とした古くも新しいマーケティング手法です
イベントやセミナー企画の作業内容とポイント
どんな仕事でも同じですが、イベントマーケティングにおいても事前準備をしっかり行わなくては望み通りの効果は得られません。特に顧客と対面で接するイベントマーケティングにおいては、本番で不手際があると、スタッフのバタバタした様子も顧客にダイレクトで伝わってしまう怖さがあります。せっかくさまざまなコストを投じてイベントを開催するのなら、できるだけ万全の態勢で当日を迎えたいものです。以下では、イベントやセミナーを企画する上でのワークフローとその注意すべきポイントについて解説します。
目的の確認
イベント・セミナーを企画する上では何を目的としているのか、そのコンセプトを明確にしておくことが必要です。せっかく開催するならたくさんの要素を詰め込みたいという思いもあるかもしれません。しかし、コンセプトが複数あると内容は散漫になり、参加者がそこから受ける印象もぼやけたものになりかねません。
そのためまず大事なことは、イベントに通底する大目標あるいはメインテーマを始めに設定することです。例えば企業の宣伝ならば、「最終目的は、新規顧客の開拓なのか、既存顧客の定着なのか」という点から決めていくとよいでしょう。
イベントの大目標が決まったら、今度はその顧客に何を訴えたいのか、そしてどんなアクションを起こしてほしいのか、というように、大目標に沿って小目標を想定していきます。そして、これらの目標を達成できるように、イベント内容も考えていくわけです。
改めてまとめると、参加者に効果的にPRをするには、なるべく伝えたいメッセージは1つに絞って明確化し、諸細目もそのコンセプトに沿ったストーリー性のあるものするのが得策ということになります。イベント開催を通してどんな成果を得たいのか、オフラインでのイベントという手間のかかる手法を敢えて使う意義も踏まえて、目指すべき大目標を最初に明確化することが大事です。
ターゲットの設定
目的の確認と並行して確認したいのは、「誰を対象にしてイベントを開催するのか」というターゲットの設定です。これは先述の「新規顧客の開拓」、「既存の顧客の定着」といった目標設定とも関係の深い領域の問題と言えるでしょう。
「とにかく多くの人に情報を発信したい」という目標設定はおすすめしません。元々限られた人数にしかアプローチできないオフラインでイベントを開催する意義自体が乏しくなってしまいます。広く情報を発信することはオンライン広告に任せて、イベントでは特定のターゲット層に絞るようにしましょう。
ターゲットとなる顧客層次第で、内容や演出はもちろん、宣伝の仕方なども異なってきます。例えば10代の女性をターゲットにしたイベントを開催するなら、告知は10代の利用者が多いSNSを活用し、会場も気軽に立ち寄りやすいポップな雰囲気にするといいでしょう。
また、開催地もターゲットに合わせて考えます。例えば東京の若者向けイベントなら、原宿や渋谷を候補地として選択しつつ、ターゲット層の特性に合わせて各種の事項も決めていきます。
イベント参加者の心をピンポイントでくすぐることができれば、その参加者は自発的にSNSなどで情報を発信してくれるかもしれません。目標と同様、ターゲッティングについてもできるだけ具体的な人物像に絞って想定することが結果的には高い宣伝効果につながります。
内容の企画
目標とターゲットを明確にしたら、次はいよいよ、どのようなイベントを開催するのか、その具体的内容を企画しましょう。イベントは、展示会、体験会、交流会、講演、セミナー、ディスカッションなどさまざまなパターンが考えられます。何を目的にどんなことをマーケティングしたいのかを明確にしておきます。それによってイベント形態も異なるため、慎重な検討が必要です。
イベント内容を企画する際には、運営体制や、連携したり招待したりする関係者などについても考えておくようにしましょう。例えば自社外の人材に依頼して講演会をするなら、講演のテーマや時間配分、報酬などについて早めに講演者と交渉しなくてはいけません。また、新規顧客の開拓が目当てなら、敢えてターゲット層が違う企業との共同開催にし、普段接点のない消費者と関わる機会を作るといった視点も必要です。
どんな場合でも内容を考える上で重要なのは、常に上記で明確化した目的やターゲットを意識して企画を進めることです。そうすればイベント内容もターゲット層のニーズに合致したものにできるでしょう。
スケジュールの決定
イベントの内容が確定したら、今度は開催日程や準備作業のスケジュールを作成しましょう。イベントの実施日は、準備期間や事前告知の期間などの都合はもちろん、内容やターゲット層に合わせて多角的に考えるのがポイントです。
例えば学生がターゲット層ならば、平日の昼間に開催するわけにはいきません。また、学校の試験期間も避けた方が無難でしょう。逆に主婦層がターゲットならば、子どもが学校に行っている時間帯や、家事がひと段落した頃合いが狙い目です。企画の立案から当日までは余裕のある準備期間を設けて、およそ2ヶ月から3ヶ月程度を想定しておくとよいでしょう。
場所の選定
イベントのスケジュールと並行して、イベント会場の選定も進めましょう。自社の施設なら融通が利くかもしれませんが、外部で場所を借りるとなると早めの予約が不可欠です。
開催地を決める際にはターゲット層やイベントの内容をはじめ、アクセスの良さなども考慮に入れましょう。どのくらいの規模の参加者を想定しているかによって会場の大きさなども異なります。
屋外で行うイベントなら、天候不順に備えて雨よけの有無などを確認することも大事です。ある程度候補地が絞れたら、最終候補地を絞るために、必ず実際に下見をしておくことをおすすめします。
宣伝方法の検討
せっかくイベントを主催しても、その内容が十分に周知されていなければ、残念な結果に終わってしまうでしょう。日時・場所・プログラムが確定したらすぐに事前告知ができるように、告知や集客の方法についてもあらかじめ検討しておきましょう。
宣伝手法は、チラシなどの紙媒体もあれば、インターネット広告やSNSなど、オンラインもあります。宣伝方法は複数の手段を検討し、イベント内容やターゲット層に適した宣伝手段を選ぶのがポイントです。
費用の把握
企画段階において忘れてはならないのは、イベントに投じる必要経費の見積もりです。必要な資材や会場費、広告宣伝費に加え、臨時アルバイトを雇うならその人件費など、企画段階においてある程度具体的な経費を算出しなければなりません。
この際に大事なのは、上記の会場費・人件費などのような基本的な費用だけでなく、内容によってかかる特別な費用もしっかり把握しておくことです。例えば講師を招待するのであればその謝礼費、展示会を行うなら、会場で配布するノベルティ製作費、会場に設置する案内板、スタッフのトランシーバーレンタル代など、細かい経費を可能な限り計上しておきます。
一から考えるのが難しければ、一般的なイベントの費用感を調べたり、類似した過去の企画にかかった費用を確認したりすることから始めるとよいでしょう。企画立案の時点でしっかりした根拠に基づく見積もりを算出し、営業など関係部署のコンセンサスもきちんと得てください。
開催中や終了後の想定
イベントを開催するにあたっては、開催期間中の各スタッフのワークフローや、終了後のことも考えておくことが大切です。
特にイベント運営に不慣れな場合は、予期せぬトラブルへの対策として、人員配置・スケジュール管理については、ある程度余裕を持たせておくことが肝心です。
また終了後は、総括や反省会をしっかり行うことが大切です。「最初に設定した目標は達成できたのか」「うまくいかなかったとしたら、それは何が原因だったのか」「今後はどのような点を改善していくべきか」などをスタッフ間で十分に認識・共有し、次に活かしていきましょう。
また、開催に当たり協力してくれた方には、今後もお世話になる可能性も考えてしっかりお礼を伝えてアフターフォローしましょう。
まとめ
本記事では、イベントマーケティングの概要と、イベントを企画立案する上での基本的な流れについて解説しました。イベントマーケティングを成功させるためには、イベントを通して何を最終的に得たいのか目的をしっかり設定することが第一歩です。ここで示したように、イベントを実施するためにはさまざまな注意点や配慮すべきことがあります。チーム内で細やかな情報共有ができていないと、本番当日に思わぬトラブルに見舞われかねません。
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